意外と知らない陶器と磁器の違い~基本知識と選び方

アートを学ぶ

2025年01月14日

実生活で役立つ 陶器と磁器の選び方と見分け方

陶器と磁器の違いについて興味を持つ人が増えています。食器やインテリア用品を選ぶ際に「どちらが自分に合っているのか」「性能や使い勝手にどのような差があるのか」といった疑問を感じたことはありませんか?この記事では陶器と磁器の違いをわかりやすく解説します。見分け方のポイントやそれぞれの特徴、実際の使用例を簡単に紹介します。

陶磁器とは

陶磁器(とうじき)は陶器と磁器を含む総称であり、粘土や陶石を主原料とした焼き物全般を指します。焼き物の技術は古代から発展し続け、人々の生活や文化に深く根付いています。

■陶器

陶器

原料…粘土を主原料とした「土もの」

製造…低温(約1100~1300℃)で焼成。吸水性があり、素朴で温かみのある質感が特徴。

特徴…表面がざらざらしていることが多く、家庭的で親しみやすいデザインが多い。

■磁器

磁器

原料…陶石や長石、石英を主原料とした「石もの」

製造…高温(約1200~1400℃)で焼成。硬さと光沢があり、吸水性がほぼゼロ。

特徴…真っ白で滑らかな表面、透光性がある薄手の製品が多く高級感がある。

■陶磁器の用途

食器…家庭や飲食店で使用される器や茶碗、皿など。

装飾品…壷や花瓶、壁掛けなどのインテリアアイテム。

工業材料…一部の陶磁器は耐熱性や絶縁性を活かして工業用途にも利用されています。

■陶磁器の歴史

中国…1万年以上前から陶磁器の歴史があり、青磁や白磁などの高度な技術を確立しました。

日本…日本独特の陶磁器文化を持ち、信楽焼、美濃焼、有田焼など地域ごとの特徴があります。

ヨーロッパ…17世紀頃にマイセン磁器など高級磁器が登場し、装飾品としての価値を持つようになりました。

原料の違い

陶器と磁器は、その美しさや用途において広く親しまれていますが、それぞれの特性を決定づけるのは原料の違いです。

原料の違い

陶器の原料

陶器の主原料は粘土です。粘土には以下のような種類があります。

白土…鉄分が少なく、焼成後に白っぽい仕上がりになる。

赤土…鉄分を多く含み、焼成後に赤褐色の仕上がりになる。

黒土…白土に黒い顔料を混ぜたもので、焼成後に黒っぽいモダンな仕上がりになる。

粘土は水を加えると柔らかく成形しやすくなり、ろくろや手びねりなどで加工されます。焼成後も内部に小さな気孔が残るため、吸水性が高く、温かみのある質感が特徴です。

磁器の原料

磁器の主原料である陶石は、長石、石英、カオリン(高嶺土)などを含む岩石です。これらの鉱物は以下のような特性を持っています:

長石…焼成時に溶けてガラス化し、磁器の表面を滑らかにする役割を果たします。

石英…磁器の硬さと耐久性を高める成分。

カオリン…磁器の美しい白い仕上がりを実現します。

陶石は粘土よりも粒子が細かく純度が高いため、焼成後はガラスのように緻密で硬い仕上がりになります。また、光を通す透光性も特徴の一つです。

焼成温度の違い

陶器と磁器は焼成温度の違いによってその質感や特性が大きく異なります。製造の過程でどのような温度で焼かれるかが、器の硬さや吸水性、表面の仕上がりなどを左右します。

焼成温度の違い

■焼成とは

焼成(しょうせい)とは陶器や磁器などの焼き物を作る際に、高温の窯で加熱して素材を化学変化させる工程を指します。この工程は成形された原料を硬く丈夫にし、完成品に必要な特性を与えるために不可欠です。焼成のプロセスによって焼き物は形状が安定し、吸水性や耐久性、見た目の仕上がりが大きく変わります。

■焼成のプロセス

素焼き(必要に応じて)
焼成プロセスの中間段階として、約800~900℃の低温で一度焼かれることがあります。この段階で硬さを増し、釉薬(うわぐすり)を塗りやすくする役割を果たします。素焼きが省略されることもあります(特に磁器の場合)。

本焼き
本焼きは最終的な高温での焼成を指します。温度は素材によって異なりますが、陶器は約1100~1300℃、磁器は約1200~1400℃で行われます。高温での焼成により、以下のような変化が起こります。

陶器…素朴で温かみのある表面が形成されます。吸水性が残るのが特徴です。
磁器…原料がガラス化し、硬く滑らかな表面や高い耐久性が得られます。

冷却
焼成後、徐々に冷却させます。急速に冷やすと割れや変形が発生する可能性があるため注意深く行われます。

焼成による違い

■陶器の場合

陶器の主原料である粘土は、比較的低い温度(約800~1300℃)で焼成しても十分に硬化します。これは、粘土に含まれる成分が低温でも焼き締まりやすい性質を持つためです。また、陶器は吸水性や素朴な質感を残すことが目的であるため、高温で完全にガラス化させる必要がありません。

■磁器の場合

磁器の主原料である陶石や長石、石英は高温(約1200~1400℃)で焼成することで初めてガラス化し、硬く滑らかな仕上がりになります。これらの成分は高温で溶けてガラス質を形成し、磁器特有の光沢や透光性を生み出します。

陶器と磁器の見分け方は?

陶器と磁器の見た目の違いは一般的な特徴こそあるものの、実際には個々の製品やデザインによって異なるため、一概に区別するのは難しい場合もあります。ただ、触り心地や焼成温度に基づく特徴などを加味すれば区別がつきやすくなります。

陶器と磁器の見分け方は

■音で見分ける方法

音の違いは陶器と磁器の密度や焼成温度による内部構造の違いに起因します。

陶器…陶器を軽く叩くと、「ポン」といった鈍い低い音がします。これは陶器が吸水性を持ち、内部に気孔(空気の通り道)が残っているためです。土の質感が残ることで音がこもりやすくなります。

磁器…磁器を叩くと「キン」と金属音に近い澄んだ高い音が響きます。これは磁器が高温で焼成されて完全にガラス化し、内部が非常に緻密で硬くなっているためです。この緻密さが音を澄ませる原因となります。

■光にかざして見分ける方法

光を通すかどうかは製品の厚みと素材の構造が影響します。

陶器…陶器は厚みがあり表面が土の質感を残しているため光を通しません。吸水性があることも理由の一つです。光が内部で反射・拡散し、通過することが困難です。

磁器…磁器は高温焼成によるガラス化で表面が非常に緻密です。特に薄手の磁器は透光性があり、光をかざすと柔らかな光を通します。これにより磁器は繊細な美しさを感じさせる特徴があります。

■高台(底部分)の質感で見分ける方法

底部分の仕上げは素材や製造工程によって異なります。

陶器…陶器の高台はざらざらしていることが多いです。これは素地のまま焼成され、粘土の粗い粒子が残っているためです。また手作り感があるため、やや不均一な仕上がりのものもあります。

磁器…磁器の高台は滑らかでツルツルしています。高温で焼成される際に表面がガラス化し、職人による丁寧な仕上げが施されることが多いです。この滑らかさが磁器特有の高級感を生み出します。

■見た目で見分ける方法

陶器…温かみのあるクリーム色やベージュ系が多く、素朴で自然な風合いが特徴です。デザインはシンプルで親しみやすく、カジュアルな印象を与えます。

磁器…真っ白で滑らかな表面が特徴で、光沢があり上品な仕上がりです。薄手のものは光を通すこともあり、繊細で高級感のある印象を与えます。

実生活での選び方

陶器と磁器を選ぶ際には、それぞれの特性を理解して自分の用途やライフスタイルに合わせて選んでみてください。

実生活での選び方

■陶器

保湿性…熱伝導率が低く、料理の暖かさを長時間保つのに適している。

吸水性…吸水性があり、乾燥させる必要がある。

電子レンジ…一部使用可能だが、割れやすい場合があるため注意が必要。

食洗器…使用後の乾燥が必要なため、向いていない場合が多い。

■磁器

保湿性…保湿性はやや劣る。

吸水性…吸水性がほぼゼロで水分が染み込まない。

電子レンジ…電子レンジ使用可能なものが多い。

食洗器…吸水性がないため使用に向いている。

まとめ

陶器と磁器は、それぞれ異なる特性と魅力を持つ焼き物で、日常生活を豊かにするアイテムです。陶器と磁器の特性を理解し、用途やデザインの好みに合った商品を選ぶことで、日常生活がもっと楽しくなるかもしれません。この記事を参考に、あなたにぴったりの一品を見つけてください。

※商品の特性について 陶器と磁器は基本的な特性はありますが、製品ごとに大きく異なる場合がありますので、取り扱い方法を注意して確認してください。

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