島根の人気美術館を日帰りで巡る大人のアート旅

アートを旅する

2025年07月08日

島根県といえば出雲大社を思い浮かべる方も多いですが、実は美術や歴史を楽しめるスポットもたくさんあります。たとえば世界に誇る日本庭園を持つ足立美術館、宍道湖のそばに建つ島根県立美術館、そして国宝・松江城など芸術や文化にふれる旅にはぴったりのエリアです。

今回は電車やバスなどの公共交通を利用した島根の自然と歴史に触れる大人のアート旅をご紹介します。美しい風景と名作に出会える日帰り旅行を楽しんでみませんか。

午前:足立美術館

足立美術館

島根県安来市に位置する足立美術館は、世界的に評価される日本庭園と近代日本画の名作コレクションで知られる美術館です。

アクセス方法

足立美術館へ公共交通機関でアクセスする場合、最寄りとなるのはJR山陰本線の安来駅(やすぎえき)です。松江や米子といった主要都市からのアクセスも良好で、観光の途中に立ち寄るのにも適したロケーションです。

足立美術館の入館料は大人2,500円、大学生2,000円、高校生1,000円とクオリティの高い展示と美しい庭園が楽しめます。6歳未満は無料となっており家族連れにも嬉しい配慮がなされています。なお、割引の内容は時期や提携先によって異なる場合があるため、事前に足立美術館の公式サイトで最新情報を確認しておくと安心です。

■見どころ①世界に誇る日本庭園

見どころ①世界に誇る日本庭園

足立美術館を語る上で触れておきたいのが、世界的にも高い評価を受けている日本庭園です。米国の日本庭園専門誌『ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング』では、22年連続で日本一の庭園として選出されるなど、その美しさは国内外で高く評価されています。

館内からはまるで一枚の絵画のように庭園を楽しめる「生の額絵」や、白砂と松が織りなすコントラストが印象的な「白砂青松庭」、時間とともに色彩が変化する苔が美しい「苔庭」、そして池の水面が空と緑を映し出す「池庭」など、趣の異なる複数の庭が広がります。どの庭も季節や天候、時間帯によって表情が変わり、訪れるたびに新たな発見があります。特に朝や夕方は光の角度によって影や色合いが柔らかく変化し、幻想的な雰囲気を楽しめるのが魅力です。

■見どころ②横山大観をはじめとする近代日本画

足立美術館といえば日本庭園の美しさが注目されがちですが、横山大観をはじめとする近代日本画の充実したコレクションも見逃せません。横山大観の作品だけで約120点を所蔵しており、その質・量ともに国内屈指です。

横山大観とは
横山大観(1868年~1958年)は日本画の革新を推し進めた巨匠であり、特に富士山を描いた作品で広く知られています。彼は伝統的な線描を排し、朦朧体(もうろうたい)と呼ばれる独自の技法を確立し、幻想的な風景を生み出しました。

■見どころ③:北大路魯山人の芸術世界

足立美術館では日本が誇る美の巨匠、北大路魯山人(きたおおじ ろさんじん)の作品が鑑賞できます。魯山人は、陶芸家であり書家、画家、美食家としても知られる多才な芸術家。その美意識は、料理を盛る“器”という日常の道具に、芸術性を見出した先駆者でもありました。

館内の「魯山人館」では陶磁器を中心に書や絵画など多彩な作品が展示されています。特に料理と器の調和を追求した魯山人の器は、ただ美しいだけでなく「使うための芸術品」として完成された佇まいを持っています。陶芸や和の美に興味がある方はもちろん、「美しく暮らすとは何か」を考えるきっかけにもなる、心に残る展示です。

滞在時間のポイント

1.開館時間すぐ(9:00〜)に来館し庭園や作品を鑑賞する。

2.館内のカフェで庭園を眺めながらコーヒータイム。

3.ミュージアムショップでお土産選び。

4.シャトルバスの時間を確認して、ゆったりとした帰路へ。

※足立美術館から安来駅へ向かうシャトルバスは整理券制で運行されています。美術館の入口付近にあるカウンターで出発便ごとの整理券を受け取る必要があるため、鑑賞前に確保しておくのが安心です。

じっくり鑑賞するなら2時間以上
横山大観の作品や喫茶室で一息つく場合、2時間以上確保すると満足度が高まります。

短時間で回るなら1時間程度
庭園と主要な展示を見て回るなら1時間でも可能です。団体客が多い時間帯は、展示室や撮影スポットで待ち時間が発生することがあります。

■基本情報

足立美術館
【所在地】〒692‐0064 島根県安来市古川町320
【開館時間】 9:00〜17:00(季節により変動あり)
【休館日】 年中無休
【公式サイト】https://www.adachi-museum.or.jp/

日中:島根県立美術館

島根県松江市に位置する島根県立美術館は、宍道湖のほとりに建つ美術館です。国内外の絵画、版画、工芸、写真、彫刻など多彩な作品を収蔵しており、特に夕日を鑑賞できる美術館としても知られています。

アクセス方法

島根県立美術館へ公共交通機関でアクセスする場合、最寄りとなるのはJR松江駅です。

徒歩:松江駅から約15分

市営バス:南循環線内回りで約6分、「県立美術館前」下車

チケット料金と割引情報

島根県立美術館の入館料は以下の通りです。

コレクション展:一般300円、大学生200円、高校生以下無料

企画展:展覧会ごとに異なる料金設定

■見どころ①水をテーマにした美術コレクション

島根県立美術館は宍道湖のほとりに位置し、館内の展示作品も水を画題とする絵画を中心に収集されています。特にフランスの写実主義を代表するギュスターヴ・クールベの「波」や印象派の巨匠クロード・モネの「アヴァルの門」など、水の動きや光の変化を巧みに表現した作品が展示されています。

美術館の建築も「水との調和」を意識して設計されており、館内の大きな窓からは宍道湖の景色が広がり、展示作品と自然が一体となる空間が演出されています。特に夕暮れ時には湖面に映る光と美術作品が融合し、幻想的な雰囲気が楽しめます。

■見どころ②世界屈指の北斎作品

島根県立美術館は世界的に評価される北斎コレクションを所蔵しており、その中心となるのが「永田コレクション」です。このコレクションは北斎研究者である永田生慈氏(1951-2018)が生涯をかけて収集した作品が島根県に寄贈されました。

永田コレクションには北斎の春朗期・宗理期・戴斗期・為一期・画狂老人卍期といった北斎の画業を網羅する作品群が含まれています。永田コレクションは永田氏の遺志により島根県内の美術館でのみ公開されることが決まっています。そのため、これらの作品を鑑賞できるのは島根県立美術館を訪れた人だけという非常に特別な機会になります。

■見どころ③:幸運を呼ぶ12羽のブロンズ像

島根県松江市の宍道湖岸に並ぶ12羽のブロンズ像「宍道湖うさぎ」は、訪れる人々に幸運をもたらすとされる人気のスポットです。島根県立美術館の裏手に位置し、宍道湖に向かって跳ねるような姿が特徴的で、訪問者にとってフォトスポットとしても魅力的です。特に前から2羽目のうさぎに西を向いて優しく触れると、幸せが訪れるという言い伝えがあり、多くの観光客がその瞬間を楽しんでいます。

滞在時間のポイント

1.コレクションや企画展を鑑賞

2.ライブラリースペースで図録をじっくり鑑賞

3.湖畔を散策してリフレッシュ

じっくり鑑賞するなら1.5時間以上
展示をひととおり鑑賞したあと本を読んだり湖畔を散策したりする時間を含めて1.5〜2時間ほどあると落ち着いて過ごせます。

短時間で回るなら1時間程度
展示室中心の見学に絞れば1時間程度でも効率的に回れます。時間帯によっては湖を眺める来館者や団体客でカフェやロビーが混雑することもあるため、タイミングを工夫するのがコツです。

■基本情報

島根県立美術館
【住所】〒690-0049 島根県松江市袖師町1-5
【開館時間】10:00〜18:30(季節により変動あり)
【休館日】 毎週火曜日
【公式サイト】https://www.shimane-art-museum.jp/

午後:松江城

島根県松江市の中心にそびえる松江城は江戸時代初期に築かれた現存する12天守のひとつで、2015年には国宝に指定されました。別名「千鳥城」とも呼ばれ、黒塗りの重厚な外観と天守最上階から望む宍道湖の絶景が魅力です。

アクセス方法

松江城の最寄り駅はJR松江駅。駅からは市営バスや観光ループバス「ぐるっと松江レイクライン」という周遊バスが出ていて、約10分で到着します。徒歩でも約20分でアクセス可能です。

チケット料金と割引情報

松江城天守への入場料は大人800円、小・中学生400円です。また、松江歴史館や小泉八雲記念館などとセットになったお得な共通券も販売されており、歴史好きにはおすすめです。

滞在時間のポイント

1.入場時間までに登閣し、天守から松江の街並みを一望。

2.城山公園を散策し、季節の花や自然を楽しむ。

3.ミュージアムショップで御城印や限定グッズを購入。

じっくり鑑賞するなら1.5時間以上
天守の内部見学に加え、城山公園の散策や堀川遊覧船、周辺の歴史施設もあわせて巡るなら、2時間以上あると満足度が高まります。

短時間で回るなら1時間程度
天守のみを見学するなら1時間ほどでも可能。

■基本情報

松江城
【住所】〒690-0887 島根県松江市殿町1-5
【開館時間】8:30〜17:00(季節により変動あり)
【休館日】 年中無休
【公式サイト】https://www.matsue-castle.jp/

まとめ

美術と歴史にふれる島根の旅は、日常の喧騒を離れて自分のペースでゆったりと過ごせる時間です。公共交通でアクセスしやすく、一人でも気軽に出かけられる静かな旅先としておすすめです。ふと思い立った週末に、大人のアート旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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