20世紀を代表する芸術家、パブロ・ピカソ。その名を聞いたことがない人はいないでしょう。彼の人生や作品、そしてその背後にあるエピソードは、今なお多くの人々を魅了しています。本記事では、ピカソに関するさまざまな視点から彼の魅力を掘り下げます。
ピカソとはどんな人?
パブロ・ピカソ(1881年10月25日~1973年4月8日)はスペインのマラガで生まれ、芸術家の家庭で育ちました。10代でバルセロナの美術学校に通い、その後パリに移り住み、芸術家としての活動を本格化させました。

■ピカソの本名とは?
パブロ・ピカソの本名は驚くほど長いことで知られています。ピカソのフルネームは「パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・フアン・ネポムセノ・マリア・デ・ロス・レメディオス・クリスピン・クリスピニャーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソ」です。
■本名に込められた意味
パブロ=父方の叔父で神父
ディエゴ=父方の叔父
ホセ=父
フランシスコ・デ・パウラ=母方の祖父
フアン・ネポムセノ=従兄
マリア・デ・ロス・レメディオス=従姉
クリスピン・クリスピニャーノ=ピカソの誕生日10/25に当たる聖名祝日の聖人名
デ・ラ・サンティシマ・トリニダード=三位一体
ルイス=父の名字
ピカソ=母の名字
■なぜ本名が長いのか?
スペインでは一般的に2つの姓を持つ伝統があります。これは「父方の姓」と「母方の姓」を組み合わせる命名方法によるものです。また洗礼名にはキリスト教の聖人や宗教的な人物の名前がよく使われます。祖父母や親戚の名前を受け継ぐことも多く、一人の子供に複数の名前を付けることが一般的で、これには家族の伝統や守護聖人への敬意が込められています。
ピカソの略歴
パブロ・ピカソの人生と作品は、時代ごとに大きく変化し、それぞれの時代背景が彼の作風に影響を与えました。以下に、彼の人生を時代ごとに簡単にまとめます。
■青の時代(1900年~1904年)
背景:親友カルロス・カサヘマスの死がピカソに深い悲しみを与えました。
特徴:青を基調とした暗い色調の作品が多く、孤独や貧困、社会的弱者をテーマにした作品が目立ちます。
代表作:『青い部屋』『老いたギター弾き』

■バラ色の時代 (1904年~1906年)
背景: 恋人フェルナンド・オリヴィエとの出会いにより、精神的に安定した時期です。
特徴: 明るい暖色系の色彩が増え、サーカス団員や道化師などを題材にした作品が目立ちます。
代表作: 『パイプを持つ少年』『サルタンバンクの一家』

■キュビスムの時代 (1908年~1912年)
背景: フランスの画家であるジョルジュ・ブラック達と共にキュビスムを確立していきます。セザンヌの影響を基に(セザンヌ的キュビスム)、キュビズムは分析的に物体を分解し多視点を融合する手法から始まり(分析的キュビスム)、総合的に色彩やコラージュを取り入れて表現を広げるコラージュ、パピエ・コレ(総合的キュビスム)へと進化しました。
特徴: 物体を円錐や立方体、球体のような基本的な形に解体して描写。
代表作: 『アビニョンの娘たち』『マンドリンを持つ女』

■新古典主義の時代(1917年~1925年)
背景:ピカソがルネサンスや古代の伝統を自身の個性と融合させ、新たな方向性を探求した時期と言えます。
特徴: 古代やルネサンスの伝統を取り入れた力強く安定感のある古典的な表現が特徴です。
代表作: 『三人の女性』『水浴の女たち』

■シュルレアリスムの時代(1925年~1936年)
背景:妻オルガとの関係が冷え込み、精神的に不安定な状態にありました。また、シュルレアリスム運動の影響を受け、より感情的で直観的な作品を制作するようになりました。
特徴: 夢や無意識をテーマにした超現実的な作風が特徴です。
代表作: 『ゲルニカ』『ダンス』

ピカソのエピソード
■ピカソは2度結婚している
ピカソは生涯で2回結婚しましたが、恋人や愛人として知られる女性は10人以上にのぼります。
1度目は1918年にオルガ・コクローヴァと結婚し、息子ポールを授かりました。1935年に別居し、オルガが1955年に亡くなるまで正式な離婚はしませんでした。
2度目は1961年にジャクリーヌ・ロックと結婚しました。当時ピカソは80歳でしたが、亡くなる91歳まで一緒に過ごしました。
■ピカソの引っ越し歴
ピカソはその創作活動と生活の中で何度も引っ越しをしています。
1.スペイン(マラガからバルセロナへ)
幼少期をマラガで過ごした後、父親が美術学校の教師となったため家族とともにバルセロナへ移住。
2.フランス(パリ)
1904年にパリへ移り、モンマルトルに定住します。
3.南フランス(ヴァロリス)
第二次世界大戦後ヴァロリスに移り陶芸に集中した時期があります。
4.その他スペインやイタリア各地
晩年はムージャンに拠点を置き、静かな環境で創作を続けました。
■陶芸にも情熱を注ぐ
第二次世界大戦後、65歳を過ぎてから陶芸への情熱を注ぐようになります。皿、花瓶、壺、オブジェなど、様々な陶器に絵付けや彫刻を施しました。ピカソの陶芸は、彼の創作の幅広さと革新性を示すものであり、彼のユニークな視点が感じられる作品群です。
ピカソから学べる創造性のヒント
ピカソはその多彩な人生と変化を続ける芸術活動を通して、20世紀を代表する芸術家として名を刻みました。幼少期から天賦の才を示し、多くのスタイルや手法を探求し続けた彼の生き方は、アートの新たな可能性を切り開きました。
青の時代の哀愁からバラ色の時代の温かさ、革新的なキュビスム、新古典主義の伝統への回帰、そしてシュルレアリスムの大胆な表現まで、彼の歩みは常に進化の連続でした。個人的なエピソードや陶芸といった多彩な挑戦も、彼の魅力をさらに豊かにしています。
ピカソの作品には、彼自身の情熱や葛藤、そして時代を超えたメッセージが込められており、私たちに「芸術とは何か」という問いを投げかけ続けています。