「車がないと巡りにくい」そんなイメージを抱きやすい一人旅ですが、鳥取は例外的に公共交通だけで快適に回れる観光地です。鳥取砂丘をはじめとする壮大な自然の中に、アートと物語を融合させたスポットが数多く存在しており、一人旅ならではの自由なペースで楽しめます。今回は砂像アートで世界的に知られる砂の美術館や、ゲゲゲの鬼太郎の聖地として知られる境港を中心に、車なしでも巡れるモデルコースをご紹介します。
モデルコース|公共交通+徒歩で巡る満喫ルート
鳥取の魅力をじっくり楽しみたい方には、バスや列車などの公共交通を利用しながら徒歩で巡る一人旅ルートがおすすめです。車がなくてもアクセスしやすく移動のストレスも少ないので、アートや風景を自分のペースで堪能できます。
スタートは鳥取駅から。
観光バス「ループ麒麟獅子号」に乗って約25分で到着する鳥取砂丘では、自然の造形美と開放感を満喫。すぐ近くの砂の美術館では、世界トップクラスの砂像アートに触れられ、静けさの中で芸術に没入できます。
その後、JR鳥取駅まで戻り、特急または普通列車で米子駅へ(所要約1時間)。さらにJR境線「鬼太郎列車」で境港駅へ向かえば、駅名標やアナウンスまで“妖怪づくし”の車内体験が広がります。
ゴールは水木しげるロード。駅を出た瞬間からブロンズ像が並び、妖怪の世界に引き込まれながらの街歩きが楽しめます。記念館やカフェ、ショップも点在し、1日または1泊2日かけてのんびり巡れるコースです。
鳥取砂丘

鳥取市の海岸沿いに広がる「鳥取砂丘」は日本最大級の海岸砂丘であり、自然がつくり出した壮大な地形美を体感できるスポットです。最大の見どころは「馬の背」と呼ばれる高さ約47mの砂丘。急斜面を登りきると、眼前には日本海が広がり、風と砂が織りなす風紋や砂簾(されん)といった自然の模様が足元に広がります。

鳥取砂丘の砂は持ち帰り禁止
鳥取砂丘は山陰海岸国立公園の特別保護地区であり、国の天然記念物にも指定されています。そのため砂の採取や砂に落書きする行為は、自然公園法や文化財保護法により厳しく制限されています。周辺のお土産屋さんでは、砂が入ったキーホルダーやボールペンといった砂丘グッズが販売されているので、立ち寄ってみてください。
アクセス:鳥取駅からは観光バス『ループ麒麟獅子』を利用すれば20〜25分でアクセスできるため、車なしでも迷わず訪問できます。なお、「砂の美術館」からは徒歩で約5分〜10分程度でアクセス可能です。
所要時間: 馬の背までの往復や写真撮影、アクティビティ体験を含めると1〜2時間程度が目安です。
鳥取砂丘
住所:〒689-0105 鳥取県鳥取市福部町湯山2164−971
砂の美術館

鳥取砂丘のすぐ隣に位置する「砂の美術館」は、砂を素材にした巨大彫刻=“砂像”のみを専門に展示する世界でも稀有な美術館です。最大の特徴はその作品群が毎年テーマを変えて制作され、展示が終わるとすべて崩されて消えてしまうという儚さと潔さにあります。
開館以来「南米」「アフリカ」「北欧神話」「アジアの歴史」など地域や文明をテーマに掲げながら世界各地のトップレベルの砂像彫刻家たちが集結。砂という一時的な素材で建築的スケールと驚異的なディテールを併せ持った空間芸術を創出しています。
「今しか出会えない芸術」として毎年訪れるリピーターも多く、ひとり旅で訪れるからこそ没入できる静けさとスケール感がここにはあります。

アクセス:鳥取駅からは観光バス『ループ麒麟獅子』を利用すれば20〜25分でアクセスできるため、車なしでも迷わず訪問できます。
所要時間:展示内容にもよりますが、ゆっくり鑑賞して写真を撮るなら所要時間は約40分〜1時間程度が目安です。
休館日:展示入れ替え期間は休館になるため、来館前に公式サイトでスケジュールを確認しておくと安心です。
鳥取砂丘 砂の美術館
住所:〒689-0105 鳥取県鳥取市福部町湯山2083-17
開館時間:9:00~18:00(最終入館17:30)
定休日:会期による
観覧料:個人 800円
https://www.sand-museum.jp/
鬼太郎列車

JR米子駅〜境港駅間を結ぶJR境線では、水木しげるの代表作『ゲゲゲの鬼太郎』のキャラクターたちが描かれたラッピング列車が運行されています。車内には天井や座席、トイレの壁面にまでキャラクターが描かれており、アニメの声による車内アナウンスも楽しめます。

駅名にも妖怪の愛称がついている
境線の各駅には妖怪の名前が愛称として付けられています。例えば米子駅 → ねずみ男駅、境港駅 → 鬼太郎駅といったように、駅のホームや駅名標にもキャラクターのイラストが描かれており、列車に乗る前から妖怪の世界観に浸れます。
単なる移動手段ではなく旅の一部として楽しめる“走るアート空間”です。境港駅に着いた瞬間から水木しげるロードへと自然につながる導線になっており、妖怪の世界への入り口としてぴったりの体験になります。
料金:普通運賃のみで乗車可能(米子〜境港間:大人330円)
座席:全席自由席、予約不要です。
水木しげるロード

鳥取県境港市にある「水木しげるロード」は、漫画家・水木しげるの代表作『ゲゲゲの鬼太郎』の世界観を体感できる全長約800mのストリートです。JR境港駅から水木しげる記念館まで続くこの通りには妖怪ブロンズ像が並び、沿道には妖怪神社や河童の泉や妖怪グッズ専門店、カフェなどが点在し、散策しながら妖怪文化を五感で楽しめるのも魅力のひとつです。
最大の特徴は街全体が“妖怪のまち”としてデザインされていること。ブロンズ像はゾーンごとに配置され、夜にはライトアップや影絵の演出も加わり、昼と夜で異なる表情を見せてくれます。昭和レトロな街並みと妖怪たちの存在が融合した空間は、アートとしても見応えがあります。

アクセス:JR境港駅から徒歩すぐ。米子駅からはJR境線(通称:鬼太郎列車)で約45分。車なしでもアクセスしやすく、駅を降りた瞬間から妖怪の世界が広がります。
チケット・料金:通りの散策は無料。水木しげる記念館の入館料は一般900円(当日券は1,000円)。妖怪スタンプラリーや記念館とのセット券もあり、観光とアート体験を組み合わせた楽しみ方ができます。
所要時間:ブロンズ像をじっくり見て写真を撮りながら歩くと約1〜2時間が目安。記念館やカフェに立ち寄る場合は、さらに時間に余裕を持つとよいでしょう。
美術と物語にふれながら、鳥取をゆったり旅する
鳥取には砂の美術館や水木しげるロードをはじめ、美術や物語の世界を楽しめるスポットがたくさんあります。どれも個性的で自然や地域の文化と深く結びついた表現に触れられるのが魅力です。
また観光地の多くが駅やバス停からアクセスしやすいため、車がなくても巡りやすく一人旅でも安心して楽しめます。砂丘を歩いたあとにそのまま美術館へ立ち寄ったり、列車に揺られて“妖怪の街”をのんびり散策したり、無理のないペースで自分らしい旅ができます。
自然とアートがほどよく混ざり合った鳥取で、気負わずふらりと自分の感性のままに歩く時間を楽しんでみてはいかがでしょうか。