アート塗り絵コレクション掲載作家 石松チ明インタビュー
2022-02-25 作家インタビュー石松チ明 /不美人画家
「アート塗り絵コレクション 〜旅・冒険編〜」に作品掲載の石松チ明さんに塗り絵作品に込めた想い、制作過程について詳しくお話を伺いました。
石松チ明 /不美人画家
1994年 静岡県生まれ
2012年 成蹊大学法学部入学
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Q. 今回は塗り絵制作のオファーをお引き受けいただきありがとうございました。石松さんはこれまでに本の装画やご自身で絵本(作品集)を出されていますが、塗り絵の制作は過去にご経験ございましたか? また、塗り絵として作品を制作するのに意識された点などありましたか?率直にご感想もお聞かせください。
塗り絵の制作の経験はなく、今回が初めてでした。
線画というのは普段、絵の完成までに通り過ぎる一つの段階です。そのようなものを人様に見せられる状態として描くこと、そして誰にでも楽しんで塗ってもらえるように描くこと、その二点には苦戦しました。
小説の装画や自作の絵本と比べて、今回は全ての塗り絵作品の顔となる表紙ということで、他の作家さんが描かれたたくさんの作品を裏切らない形で「これから冒険が始まるぞ!」感を出さねばならない難しさもありました。
楽しかったのは、毎回ペンで下書きをなぞるときは可能な限り綺麗な線を描こうと努めているのですが、今回はいつも以上に線を美しく描くことに耽溺できたことです。
Q. 「八日の土曜日」作品のテーマについて教えてください。
ある女の子の旅立ちを描きました。
女の子は、空は飛べないということを知っています。飛べないと分かっていながら飛ぼうとすることに全ての意味があるような気がしています。 この絵のこだわりは背景のビル群です。 決してここが魔法の世界ではないということを現わすため、現実感のある建物たちを配置しました。
Q.「八日の土曜日」の配色は、どのように決められましたか?こだわりなどあれば教えてください。
基本的にいつも一色しか使わないのですが、今回はみなさんに塗り絵として楽しんでもらうべく二色使わせていただきました。
一色、または二色しか使わない理由は、単純に私自身色数の少ない絵が好みだからです。
Q. 今回、「アート塗り絵コレクション第二弾」の表紙をご担当いただけるとのお返事をいただいてから、アイデアをご提出いただくまでのスピードがとても早く感動いたしました。普段も作品を制作する上で、どんどんアイデアが出てくるのでしょうか?また、どのような時インスピレーションを感じますか?
アイデアはふわふわと湧き出ることもあれば、うんうん捻り出さなきゃいけないこともあります。
例えば音楽を聴いていて、この曲の芯にあるこの感覚を私も描きたい!という気持ちになり、その感覚を自分の中で自らの感情と混ぜこぜにして新しい感覚として生み出して再構築して紙に落とす、という絵の描き方をすることが多いです。
インスピレーションは上記のように音楽や文学など何か他の芸術作品に触れた時に一番感じやすいですが、常にアンテナを張っているのでお風呂でぼーっとしている時にポロっと感じることもあります。
「 世間的にはよしとされていないものたちにきらめきを 」
Q. 石松さんは「不美人画家」と名乗っていらっしゃいますが、なぜ不美人画を描こうと思ったのでしょうか?きっかけや作品に込める思い、魅力などお聞かせください。
「不美人画」とは顔面・内面共に美しくない女の子を画になるように絵にする試みで、「世間的にはよしとされていないものたちにきらめきを見出そう」という思いから描き始めたオリジナルジャンルです。
きっかけは私がサドマゾヒズムに浸かっていた時に、美人な女の子よりもちょっと可愛くないくらいの女の子の方がいぢめたくなるな、と思ったことです。どんなものも見方を変えればいい面があるという思想のもと求道しています。
こちらは「おやゆびひめ」という作品です。
3歳の頃に母が読んでくれた「親指姫」の童話、それを受けて私の手のひらの中で小さな親指姫をいぢめたいと思ったり、反対に私が親指姫になって大きな手のひらの中でいぢめられたいと感じたり、そういった感情をそのまま紙に写せた作品です。2017年に制作した初期作品ですが、未だに私の中のマゾヒズムを一番出力することができた絵だと思っています。
こちらは「いたづら」という作品です。
「ちょっと可愛くない子の方が愛らしくていぢめたくなる」という思考そのまんまに描いた作品です。私的に、ポニーテール引っ張りはスカートめくりよりも一段上のいたづらだと思っています。2019年のペーターズギャラリーコンペにて大賞を受賞した作品でもあり、私の中で代表作の一つとなっています。
こちらは「こけたうさちゃん」という作品です。
昨年、2021年に制作した「すてうさぎ」という絵本の1ページなのですが、去年を代表する作品の一つとして気に入っています。
この絵もまた、上記と同じく「ちょっと可愛くない子の方が愛らしくていぢめたくなる」を意識して描きました。顔面からすっ転んでしまったまぬけ愛らしいうさちゃんとそれをほっとけない男の人の関係性を強く意識して描いた作品です。
Q. ルーティンやリフレッシュ方法などありましたらお聞かせください。
音楽はずっと聴きながら制作をしています。
というのも、音楽から制作のインスピレーションを受け取ることがほとんどだからです。
ジャンルに関しては基本的にJロックバンドのスピッツのみを聴いています。他にQueenなどを聴くときもありますが、作品に関する精神性を受け取っているのはスピッツのみです。iPhoneに全曲入っています。
他に趣味と言えるものは読書くらいで、読んだ時は年間250冊くらい読みました。特に太宰治からは今の制作に繋がる影響を非常に強く受けていると思います。
過去にはスケートボードが趣味だった時期もあります。ブンブン滑っていました。
Q.今後、作家活動で挑戦したいことはありますか?
ずっと背中を追いかけ続けているスピッツとは何らかの形で一緒に仕事をしたいです。
それがCDジャケットを担当させてもらうと言う形でも嬉しいですし、私自身がスピッツの詩評論を描いて出版するという形でも面白いなと目論んでいます。
後は、現在の私の芸術観を作ってくれたと言っても過言ではない太宰治の装画をさせてもらえたとしたら、それはもう我が人生に一片の悔いなしだなとも思っています。
Q.「アート塗り絵コレクション」出版プロジェクトは、イニシャルギャラリーの作家支援プロジェクトの一つになりますが、このような取り組みについてどう思われますか?
間違いなくとても素晴らしい取り組みだなと思っています。
若い作家が絵で報酬をいただく、その基盤を作ってくださっているように感じます。
この取り組みから羽ばたく作家も多いと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
今後の展示情報
2月19日~3月6日まで日本橋みうらじろうギャラリーにてグループ展が、3月2日~8日まで名古屋栄三越にて個展「帰ってきた不美人画展」を開催します。こちらの個展では今回の塗り絵表紙作品の原画を販売展示いたします。
4月には横浜で、5月には大阪でグループ展が、来年4月には銀座での個展が決まっています。ご高覧いただけたら嬉しいです。
書籍情報
2022年3月24日販売
飾れるアート塗り絵
「アート塗り絵コレクション 〜旅・冒険編〜」
作品価格:定価1,650円(本体1,500円+税)
ISBN :978-4-9911614-1-4A4判/並製/64頁
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