「裡にある暗さも美しさに昇華したい」  林 不一インタビュー 2021-05-26

人間の儚さ故の美しさを、柔らかく自然な表情で描く日本画家・林不一さん。

林 不一 / 日本画家

「アート塗り絵コレクション」にもご参加いただいた林不一さんに、初めての塗り絵本出版の感想や、日々の制作、作品に対する想いなど詳しくお話を伺いました。


林不一
「 生と死と還た双つながら美し 」

林 不一

経済学、社会学を学んだ後、日本画を専攻

個展/Solo Exhibitions
2019
個展(GALLERY ART POINT.bis)

グループ展/Group Exhibitions
2020
山本冬彦が選ぶ若手作家展(Gallery 枝香庵)
KOWAII展(新井画廊)
万葉集と日本画展(ギャルリー志門)
3331アートフェア(ARTS CHIYODA)
2019
魅惑の女性画展(Merry Art Gallery)
グループ展(Gallery Metanoia/フランス)
月に眠る華(Gallery Hydrangea)
KIZUNA展(GALLERY ART POINT)
ART WAVE展(RECT VERSO GALLERY)
KENZAN2019(新宿パークタワー)
2018
ART INDEPENDENT(TAG BOAT)
タツコン(GALLERY TATSUYA)
銀座モダンアート企画展(銀座モダンアート)

受賞/Awards
2019
月刊美術新人賞デビュー2019入選
2018
女流画家協会展入選
美の起原展奨励賞受賞

書籍掲載/List of publications
2021
飾れるアート塗り絵『アート塗り絵コレクション』〜人物モチーフ編〜 作品掲載

【twitter】


Q. 作家、画家を志したきっかけを教えてください

物心つく前から、絵描きさんになると言っていました。何がきっかけかはわかりませんが、とにかく絵ばかり描いている子供でしたので、自然な成り行きだったのかもしれません。


Q. 林不一さんは日本画で主に女性を描かれていますが、特定のモデルはいますか?また現在の作風になったきっかけなどありましたらお聞かせください。

モデルさんにポージングして頂いても、顔の表情は変えています。表現したい心模様が現れるように、表情を試行錯誤して描いています。

瞳に砂漠を宿している人、現実に生きていながら、心が遠くを見ているように感じられる人、そういう人が身近にいて、もしかすると心の奥底で彼女をずっと追っているのかもしれません。


現在の作風になったのは、芸大卒業後しばらく経ってからだと思います。学生時代はもっと暗いどろどろした絵だったのですが、卒業制作で出し切ってしまったのと、あからさまなのはあまり描きたくないと思うようになりました。裡にある暗さも美しさに昇華したいと思っています。


Q. 林不一さんの作品は、柔らかく自然な表情で描かれていて、とても魅力を感じました。作品の制作にあたり意識していること、また大切にしていること、伝えたいことなどはありますでしょうか?

作品の制作で意識することは、年々変わっていくようです。現在は、テーマの複雑さには関わらず、一見してわかりやすい美しさを意識しています。


「 芍薬デッサン 」

「見る人それぞれに感じ取ってほしい」

芸術は難しい、という意見もたまに耳にするので、芸術が身近なものとなるように、出来るだけ誰にとってもわかりやすい絵を描きたいと思っています。また、やはり先述のように、表情の表現には一番力を入れています。
表現したいことがあっても、作品は自分の手を離れた(完成した)瞬間から別の自我を持つと思うので、見て頂く方それぞれにお好きなように感じ取って頂きたいと思います。

なので伝えたいことというのはあって無いようなものかもしれません。もちろんこれらのことは今後変わっていくだろうと思います。


アトリエ風景

Q. 作品制作をするうえで、ルーティンや制作ペースなどについてはいかがでしょうか?また普段どの様な場所で制作活動をされていますか?

自宅で描いています。時々、近くの植物園や公園に植物の取材に行きます。
もともと筆は遅い方だと思います。最近更に遅くなりました。作品や自分の作風自体について考える時間が増えたのと、より精度を高めたいという思いから自然と遅くなりました。

また、友人や家族が無理しないようにといつも体調を気遣ってくれるので、無理をしなくなりました。


「 ささめく季節 」

Q. 制作中のリフレッシュ方法などありましたらお聞かせください

煙草と散歩と読書です。


Q. ご自身の作家活動において影響を受けた人物や事柄などはありますか?

「幼いころの祖母の存在」

祖母がファッションや陶磁器が好きだったので、彼女の集めたものを小さい頃から見て育ちました。私は彼女のファッションや陶磁器がとても好きだったので、今になって思えば影響を受けていたのかもしれません。

また彼女も私の絵を好んでくれて、小さい頃、彼女の服に花の絵を頼まれて描いたこともあります。すごく喜んで頻繁に着てくれていたことを覚えています。地元の自然豊かな景色にも、何かしら影響を受けていると思います。


林不一
「 また来る春 」

また、社会学を学んでいた大学院生の頃、芸術の道に進むかどうかとても悩んでいました。その時に社会学や哲学の分野から芸術の社会的意義などを教えて頂いたり、背中を押して頂いたりしたので、ようやく芸術の道に進む決心がつきました。

当時は、絵を描くのが好きでも、芸術の意義や芸術での社会貢献の仕方がわからず、それでは仕事にしてはいけないと考えていたのです。今は意義などなくても全く問題無いと思っていますが、当時はそうではなかったので、意義があるのだと納得する必要がありました。


林不一
「彼方へ 」

またギャラリーの方々や展示を企画して下さる方々、鑑賞者の方々にも日々影響を受けているのではないかと思います。アドバイスを頂いたり絵のご感想を頂いたり、前向きで温かい相互作用の中で、日々作家として成長させて頂いているのだと思います。


Q. 「アート塗り絵コレクション」出版プロジェクトにもご参加いただきましたが、今回の塗り絵企画について、率直なご感想、難しかった点など教えてください。

自分の作品が書籍になるということに憧れがあり、なかなかそういう機会の無い新人作家にとっては、大変貴重で有難い企画でした。


「 春の装い 」 アート塗り絵コレクション掲載作品

塗り絵として塗りやすいものを意識しましたが、あまりにシンプルでも塗る楽しさが減るでしょうし、そのあたりのバランスが難しかったです。けれども自分にとって初めての、楽しい試みでした。 筆が以前よりも遅くなったので、着彩の時間がもう少し欲しいと思いましたが、間に合わせるのも仕事のうちなので、もっと頑張ります..!

私は下絵のトレースにオレンジ色の念紙を使い、墨でなぞった後もそのオレンジ色は少し残ります。そしてパーツによって墨の薄さも僅かに変えているので、線画が綺麗に印刷出来るか心配でした。仕上がったページを見て、すごく綺麗に線画を印刷して頂いていたので、とても嬉しかったです。もちろん着彩見本も美しく仕上げて頂きました。

マット加工なので照り返しが無く見やすいというのも、細部にこだわって頂いていることがわかり、感激しました。作品を大事にして頂いているのだなと思います。


Q. 「アート塗り絵コレクション」の塗り絵は塗ってみられましたか?

初めての書籍なので勿体なくて塗れていません。保存用にもう一つ持っておこうかなと考えています。祖母は一枚ずつ楽しんで塗ってくれているようです。


Q. 今後、作家として挑戦したいことはありますか?

現在立体作品も、少しずつではありますが制作しています。そのうち平面と立体両方の展示が出来ればいいなと思います。職人と言えるような作家になりたいです。



Q. SNSでの活動について、気を付けている事、実践している事、反響などはいかがでしょうか?

途中経過の画像を出来るだけ載せるようにしています。日本画を描いているというと、日本画というのは水彩画ですか、水墨画ですかと聞かれることが多いので、日本画をよく知らない人、知っていても画材や制作過程はよく知らない人にも身近に感じてもらえたらいいなと思って載せています。


林不一
制作過程

また展示の無い時でも制作過程で楽しんでもらえれば嬉しいです。他の作家さんの展示情報や作品も出来るだけRTするようにしています。多くの人に知ってもらえることが大事だと思うので、そうやって芸術界隈を盛り上げたいです。


林不一
「 菖蒲デッサン 」

「 どんな立場の人でも生きやすい社会に 」

政治的、社会的なアクションにも出来るだけ参加して発信したいと思っています。個人としても作家としても、この社会に生きている限り、社会的責任があると考えています。

どんな立場の人でも生きやすい社会になればいいなと思います。ただ日本社会では、政治的発言を好まない人も多いので難しいとも思います。絵を楽しんで欲しくても、私の政治的発言で絵を楽しめないという人もいらっしゃるかもしれません。可能な限り誰をも排除しない、そういう在り方を日々模索しています。

ただSNSを頻繁に使うわけでは無いので、これらのことは毎回出来るわけではありません。気がついたら、余裕のある時に、という感じです。


今後の展示情報



美の起原にて、
6/7〜6/12『私の中の太宰治展』
8/25~9/8『私のちいさなたからもの展』に参加します。

制作ペースが遅くなったので、以前よりも展示は少ないですが、展示があれば随時SNS等でお知らせ出来ればと思います。

書籍情報

飾れるアート塗り絵『 アート塗り絵コレクション 』〜人物モチーフ編〜
定価1,650円(本体1,500円+税)A4判/並製/62頁
ISBN 978-4-9911614-0-7
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アート塗り絵コレクション掲載作品

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