【美術技法】ペン画、ドローイング、イラストレーション、グラフィックアート 2022月04月12日 アートの知識

技法レポート


ペン画

 

ペン画は主にペンと黒インクを使用して表現された絵画の様式です。その他にも漫画やイラストレーション、絵本やデザインなどの分野においても活用されてきました。ペン画によって描かれる対象は風景画や空想画に多い傾向があります。代表的なアーティストはアイルランドの挿絵画家ハリー・クラークです。代表作に「アンデルセン童話」の挿絵があります。その特徴は物語を象徴するような観念的な世界を白黒の世界で見事に表現していることです。これは作家自身がステンドグラスの技法で培った造形技術も完成度を高めるのに役立っています。このように、ペン画には甘美でありながら幻想的な世界を抽出することの手助けとしての役割を担い続け、今日も多くの表現者に愛されています。

ドローイング

 美術の世界におけるドローイングは「線画」のことを指しています。通称「ライン・ドローイング」とも呼ばれ、単色で描かれた作品、それはペンやクレヨンや木炭などの制約はなく、「線を引く」という行為そのものに主体を置いているのかどうかがポイントです。またデッサンなどにおける素描もドローイングに分類されますが、今日の美術教育におけるドローイングは描く行為から拡張を続けており、他の媒体を使ったアーティストが制作過程の一環として、ドローイングも公開したインスタレーション作品の一部として提示されるケースも少なくありません。ドローイングは様々なアートフィールドの土台として支えている側面もあります。

イラストレーション

イラストレーションが「アート」なのかは議論の余地があります。なぜなら作家自身が世界を司る他の芸術とは異なり、出発点として商業的な側面も多いからです。とはいえ昔から書物の挿絵に使われるなど、文学と近いところにありました。例えばルイス・キャロスの「不思議の国のアリス」は幻想的で不可思議な物語として秀逸ですが、素晴らしい挿絵によるビジュアル面での支えがあったことは間違いありません。また風刺として世相を伝えるメディアとしての役割も担ってきました。今日におけるイラストレーションは技術の発展と共に、紙に直接描くだけでなく、デジタルイラストレーションの分野にも広がりを見せており、その在り方も加速度的な変化を続けています。

グラフィックアート

デザインとししての側面が強いグラフィックですが、21世紀に入り「グラフィックアート」と呼ばれるジャンルが形成され始めています。これはグラフィックデザイナーがクライアントの要望に沿ったデザインを描く従来の仕事とは別に、画家と同じく好きなものを描き発表することが増えてきたことが要因でしょう。では絵画との違いは何かというと、絵画がフレームからいかにはみ出していくのかを目指すのに対して、グラフィックアートはフレーム内で完結させる作用があるはずです。つまりフレームの内側に宇宙を見つけることこそグラフィックアートの主たる方向だと思います。まだまだ歴史の浅い分野ではありますが、絵画とは別のベクトルを持つアート作品として、今後どのような文脈の上で発展していくのか注目です。例えばアートの世界では抽象と具象の議論が長く続きましたが、現代のアーティストはその垣根を軽々と超えていきます。それと同じようにグラフィックアートはデザインとアートの文脈を持ちながら、鮮やかに美術史の上でポジションを築くかもしれません。まだ評価が定まっていない分野だからこそ、今後の動向から目が離せないジャンルとなるのではないでしょうか。

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