「移り行く景色の中で、一瞬一瞬の生きている感動を伝えたい」中沢梓インタビュー
2021-08-11 作家インタビュー中沢梓/ 大和絵師
日本で受け継がれた伝統を大切に、美しく力強く作品を描く大和絵師の中沢梓さんに、「大和絵」の魅力や、作品に込める思い、今後の活動についてお話を伺いました。
中沢 梓
1984年 東京都出身
女子美術大学絵画学科日本画専攻 卒業
女子美術大学大学院 日本画研究領域 修了
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Q. 作家、画家を志したきっかけを教えてください
小さい頃から絵描きになりたいと思っていました。 進路を選ぶとき、高校から絵の道に進むことを決めました。
Q. 中沢梓さんは「大和絵師」として活動をされていますが、「大和絵」の魅力や特徴、「大和絵」を通して伝えたいことなどありましたら、教えてください。
大和絵は、古典的な表現技法で、日本の風俗を描く絵画です。日本的な様式美と、装飾性、優雅さを大切にしています。
紋様や色彩のひとつひとつがとても縁起がよく、私は描きながら宝箱のようだなと思っています。移り行く空や景色の中で感じる、一瞬一瞬の生きている感動を伝えたいです。
抑圧や同調圧力からの「解放」
Q.作品を制作する上で、テーマなどはありますか?
最近、意識しているのは、抑圧や同調圧力からの「解放」です。 様式を重んじる絵画なのに、変に聞こえるかもしれませんが・・・。
モチーフや、色彩、構図などで、そうした意味を込めていきます。
Q. 中沢さんの描く作品は、華やかで、凛とした雰囲気を纏っていて、丁寧に制作されていることが伝わるような、作品に対する愛情を感じました。作品の制作にあたり意識していること、また大切にしていること、作品に込める思いなどはありますでしょうか?
そのように感じて頂き嬉しいです。ひとつひとつの作品を、なるべく悔いのないように送り出したいと思っています。作品は、良くも悪くも作者の鏡です。自分自身をご覧いただくのだという気持ち、そして大和絵を名乗るものとして、その名に恥ずかしくない作品を遺したいと思っております。
Q. 日々の作品制作にあたり、ルーティンやリフレッシュ方法などありましたらお聞かせください。また、どのようなときにインスピレーションを感じますか?
制作が忙しいときは、毎朝4時くらいに起きて制作が始まります。リフレッシュは、ジョギングや筋トレです。音楽を聴くと、感情が押し寄せてきて、ふと描きたいものが決まったりします。
「 自分にとって一番大事なことに向かって走り出してほしい、そんな意思を込めて」
Q. 中沢さんの作品は、登場する人物・動物の表情から、着物や鎧の模様、背景の細部にわたる部分まで、とても細かく拘って描かれていると感じました。
作品にもよると思いますが、IG掲載作品「Rider~花嵐~」の制作にはどのくらいの時間がかかりましたか?また作品のご説明もお願いします。
「Rider~花嵐~」は、3か月かかります。その間に同時進行するものもたくさんあるので、3か月ずっと、というわけではありませんが。
こちらは、絵絹に描いています。 絹は透けるので、その特徴を生かし、裏からたくさんの桜文様と大地を描いています。大地には、四季と、人間を見つめる動物たち。桜の花嵐は、たくさんの情報や抑圧を表しています。
私たちは日々膨大な情報に接しますが、そんな中でも、自分にとって一番大事なことは自分で考えて決め、その方向に向かって走り出してほしい、そんな意思を込めました。
Q. ご自身の作家活動において影響を受けた人物や事柄などはありますか?
大和絵、浮世絵、日本画の巨匠たちは常にリスペクトしています。その他で強い影響を受けたのは、家族、特に母親です。母にはよく「中途半端はするな。描きたいなら徹底的にやれ」と言われていました。今でも一番応援してくれています。
Q. SNSでの活動について、気を付けている事、実践している事、反響などはいかがでしょうか?
なるべく、思っていることは飾らず、正直に発信しています。ツイートの相手は、生身の人だと常に意識し、失礼のないよう気を付けています。ありがたいことに、たくさんの反応を頂いており、いつも感謝しております。
Q. 今後、作家として挑戦したいことはありますか?
今後は、展示活動の範囲が広がっていければと思います。また、さまざまな立場の方との交流や意見交換を積極的にしていきたいと思います。
今後の展示情報
9月 KENZAN2021 /池袋芸術劇場
10月 一宮市三岸節子記念美術館にて、日本画のワークショップを担当
11月 個展 / 池袋東武百貨店