「印象派」「新印象派」「ポスト印象派」似たような言葉だけど、どう違うの?そんな疑問を持つ方は少なくありません。光を描いたモネ、点で構築したスーラ、心を表現したゴッホ。それぞれの作品に流れる考え方や技法には明確な違いがあります。この記事では三つの芸術運動の特徴をわかりやすく整理し、代表作品とともにその違いを解説します。
- 目次
印象派
印象派は19世紀後半のフランスで誕生した革新的な芸術運動であり、それまでの絵画の常識を覆すような表現を追求しました。彼らが目指したのは歴史や神話を描くのではなく、日常の風景や人々の姿をその瞬間に見えたままの印象として描くことでした。特に光の移ろいや空気の揺らぎといった、時間とともに変化する視覚的な現象を捉えることに強い関心を持っていたのが印象派の画家たちです。
印象派の特徴
視覚の印象を重視した表現
印象派は構図や細部の描写よりも、目に映る一瞬の印象を優先して描かれています。従来の絵画が物語性や構成美を重視していたのに対し、印象派は光の揺らぎや空気感、色彩の変化など、視覚的な体験そのものを絵画に落とし込もうとしました。
筆触分割による色彩表現
技法面では「筆触分割」と呼ばれる独自のスタイルが特徴的です。これは絵具をパレット上で混ぜるのではなくキャンバス上に異なる色を並べて置くことで、鑑賞者の目の中で色が混ざって見えるという視覚的な効果を狙ったもの。たとえば、青と赤を並べることで遠目には紫に見えるようにするなど、色彩の鮮やかさと透明感を保ちながら自然な調和を生み出す技術でした。
印象派を代表する画家

ピエール=オーギュスト・ルノワール 「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」 (1876)
印象派を代表する画家には、クロード・モネ、ピエール=オーギュスト・ルノワール、カミーユ・ピサロなどがいます。
モネは印象派という名称の由来となった「印象・日の出」を描いたことで知られ、光と水の表現に生涯を捧げました。彼の睡蓮シリーズは、時間や季節によって変化する池の表情を繰り返し描いた作品群であり、印象派の理念を象徴するものです。
ピエール=オーギュスト・ルノワールは印象派の中でもとりわけ人物表現に優れた画家として知られ、人々の幸福感や日常の美しさを柔らかな色彩と筆致で描き続けました。彼の代表作「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」では、陽光が差し込む野外ダンスホールで若者たちが語らい踊る様子が生き生きと描かれ、印象派の光と空気の表現が見事に体現されています。
カミーユ・ピサロは、印象派の中でもとりわけ穏やかで誠実なまなざしを持ち、農村や都市の日常風景をありのままに描いた画家として知られています。代表作のひとつ「ジャレの丘 ポントワーズ」では、草木に覆われた丘の斜面を歩く女性たちの姿が描かれています。
新印象派
新印象派は19世紀末、印象派の感覚的な色彩表現をさらに発展させ、科学的・理論的なアプローチによって絵画を構築しようとした芸術運動です。新印象派が目指したのは光や色の印象をより正確かつ明晰に表現することであり、視覚の仕組みや色彩理論に基づいた技法を用いることで、絵画に新たな秩序と明快さをもたらそうとしたのです。
新印象派の特徴
点描主義(ポワンティリスム)
新印象派の最も象徴的な技法は「点描」です。絵具を混ぜずに純色の小さな点をキャンバス上に並べることで、鑑賞者の目の中で色が混ざって見える「視覚混合」を狙いました。これにより印象派よりも明るく鮮明な色彩表現が可能になりました。
科学的な色彩理論の応用
印象派が感覚的に筆触分割を行っていたのに対し、新印象派はミシェル=ウジェーヌ・シュヴルールやオグデン・ルードの色彩理論を参考に、補色対比や同時対比などの視覚効果を計算して画面を構成しました。これは芸術に科学的根拠を導入した画期的な試みでした。
新印象派を代表する画家

ジョルジュ・スーラ 「グランド・ジャット島の日曜日の午後」 (1884-1886)
新印象派を代表する画家には、ジョルジュ・スーラ、ポール・シニャック、アンリ=エドモン・クロスなどがいます。
ジョルジュ・スーラ
ジョルジュ・スーラは色彩理論と視覚心理学を研究し、点描技法を確立しました。代表作「グランド・ジャット島の日曜日の午後」は古典的な構図の中に点描技法を用いた画期的な作品であり、新印象派の理念を象徴する傑作です。
ポール・シニャック
ポール・シニャックはジョルジュ・スーラの理論を継承・発展させた画家。シニャックはより大胆で鮮やかな色彩を用い、南仏の港やヨットなどを生き生きと描きました。代表作「サントロペの港」は点描による色彩の輝きと構図の明快さが際立つ作品です。
アンリ=エドモン・クロス
アンリ=エドモン・クロスは南仏の光に魅せられ、明るく豊かな色彩とモザイクのような点描で牧歌的な風景や人物を描きました。代表作「黄金の島」は新印象派の色彩理論と詩的な風景描写が融合した作品です。
ポスト印象派
ポスト印象派は19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍した画家たちによる芸術運動であり、印象派の技法や理念を受け継ぎながらも、その限界を乗り越えようとした表現の探求が特徴です。彼らは光や空気の描写にとどまらず、個人の感情・思想・構成力を重視した絵画表現へと踏み出しました。
ポスト印象派の特徴
内面の表現と象徴性
印象派が「見えるもの」を描いたのに対し、ポスト印象派は「感じるもの」「考えるもの」を描こうとしました。彼らは感情や精神性を色や形で表現し、見たままではなく再構成された世界観を提示しました。色彩は単なる視覚効果ではなく、象徴的な意味や心理的な深みを持たせるために使われました。
構成力と造形意識
印象派の即興性に対して、ポスト印象派は画面の構成や造形の安定性を重視しました。フィンセント・ファン・ゴッホは渦巻く筆致と原色によって内面の激しい感情や精神の揺らぎを表現。ポール・ゴーギャンは平面的な構図と鮮やかな色彩で神話的で象徴的な世界を描きました。
ポスト印象派を代表する画家

『リンゴとオレンジのある静物』ポール・セザンヌ 出典:Wikipedia
ポスト印象派を代表する画家には、ポール・セザンヌ、フィンセント・ファン・ゴッホ、ポール・ゴーギャンなどがいます。
ポール・セザンヌは画面の構成と造形の安定性を追求しました。代表作「リンゴとオレンジのある静物」は、印象派の「見えたままを描く」姿勢から一歩進み、複数の視点を統合して構成するというポスト印象派的なアプローチが反映されています。
フィンセント・ファン・ゴッホは、激しい感情を渦巻く筆致と原色で表現し、「星月夜」や「ひまわり」などの作品に、精神の揺らぎや孤独や生命への問いを込めました。
ポール・ゴーギャンは文明社会から離れ、タヒチの原始的な世界に精神性を求めました。代表作「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」は人生の根源的な問いを象徴的な色彩と構図で描き出しています。
印象派・新印象派・ポスト印象派の比較表
視点 | 印象派 | 新印象派 | ポスト印象派 |
---|---|---|---|
目的 | 光の瞬間を捉える | 色彩を科学的に構成 | 内面や思考を表現 |
技法 | 分割筆触 | 点描写 | 感情的、象徴色 |
主題 | 見えるものを描く | 視覚の法則を探る | 感じるものを描く |
まとめ
印象派は「光の一瞬」を描き、新印象派は「色と構図の理論」を探りました。そしてポスト印象派は「感情や思想」をキャンバスに託しました。同じ風景を前にしても、描かれる世界はまったく異なります。それは彼らが何を見たかではなく、「世界をどう感じたか」が絵に現れていたからです。
光を捉えることから始まった美術の旅は、やがて理性に触れ、心の深層へと至りました。それぞれの画家の筆の軌跡が、美術史を動かしただけでなく、今なお私たちに「見るとは何か」を問いかけています。

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