アート塗り絵コレクション掲載作家 Hitomi Nakajimaインタビュー 2021-04-29

「アート塗り絵コレクション 〜人物モチーフ編〜」に作品掲載のHitomi Nakajimaさんに塗り絵作品に込めた想い、制作過程について詳しくお話を伺いました。


「昆蟲少女」

Q. 「昆蟲少女」作品のテーマについて教えてください

人も自然の一部として生きる以上、私たちのどのような活動も周りの環境に何らかの変化をもたらし、他の生き物と複雑に絡み合う生態系と無関係でいる事はできません。私たちは今、地球の周期的な気候変動や自身の活動による周囲への影響から別種の生き物や自分たちの置かれた環境を理解する必要性にかられています。

しかし、自分の意識を保ったまま体を入れ替える事でもできないかぎり本当の意味で他者を理解する事は困難を極めます。それでも人として、多角的なものの見かた、他者の視点(立場)に立って考えてみる事の大切さを感じて「共感性empathy(エンパシー)」を題材として制作に取り組みました。

今回描いた少女は妖精ではありません。
作品のタイトルにもある通り「昆虫」に変容した「人間の少女」です。
もし、自分の意識をそのままに異種の生物になることができたなら…色…形…匂い…空気…
今まで全く知りえなかった新しい世界が見えてくるのでしょう。

「共感性を題材に」

− 人ではない別の生物の視点に立って考えてみる、他者理解することの大切さを作品を通して伝えたいというHitomiさんの気持ちが作品からも伝わってきます。

Q. 色鮮やかで淡い感じが印象的な着彩見本になっていますが、着彩する際のコツなど教えてください。

はじめにパステルで色の濃淡を下塗りしてから、油性マーカーで塗り進めていくと失敗しにくいかと思います。パステルは、綿棒などでぼかしながら塗っていくとムラが出にくく、他の色とのグラデーションも作りやすいです。

油性マーカーは、濃い色から先に塗り、薄い色で濃い色を溶かすようにぼかしていくと柔らかい感じのグラデーションが作れます。少女のほほや花小物など強調したい部分は、油性マーカーで塗った後にさらにパステルで重ね塗りする事で、より画面が華やかになります。


着彩見本はミクストメディアという技法で、手描き着彩と背景デジタル描画を合成して仕上げられていますが、ミクストメディアで着彩された理由はありますか?

「少女」と「蝶」は生物としての質感を出したかったのでアナログな技法で、背景は淡くふんわりとした空気を表現したかったので、色を重ねても重量感の出にくいデジタル加工で仕上げました。ミクストメディアを用いる事で、アナログとデジタルそれぞれの特徴が相互に作用して表現の幅が広がるように思います。

Q. Hitomi Nakajimaさんは、昆虫や野鳥の細密画を描くワイルドライフアート作家として作家活動されていますが、ワイルドライフアートについて教えてください。

ワイルドライフファインアートは、ヨーロッパ諸国で発展してきた博物学を起源として、当時まだ写真などの撮影技術が発達しない中、学術的な書物の解説のために描かれた博物画が始まりとされています。アメリカやカナダで盛んに展開されていて、野生生物の肖像画や生態画、彫刻など細密に表現されたものが多い印象です。

日本では、1960年代後半ごろから徐々に広まったそうです。気候変動やゴミ問題などが取りざたされるようになってからは、自然環境保護の観点から注目され、自然や動植物を愛好する作家がワイルドライフアーティストとして活動の場を広げようとしています 。

− ワイルドライフファインアートは博物画がはじまりとなっているのですね。写真も魅力的ですが、絵画表現することで野生生物の感情や表情、描き手の愛着といった人の眼差しをより感じることができるように思います。



Q. 昆虫や野鳥を描き始めたきっかけやエピソードを教えてください。

私の家は、母方、父方どちらの祖父母も生き物が好きで、犬や猫、鳥や魚などいろいろな動物を飼育したり、観葉植物はもちろん、家族で食べるための家庭菜園や小さな田んぼの世話をして生活していました。

子どもの頃、夏休みに実家へ行くと朝は犬の散歩をしながらウサギのご飯にタンポポと自分たちのおやつにはよもぎ餅用のヨモギを摘んだり、小豆の収穫時期になると、天気のいい日にゴザの上で豆の選別をする祖母のとなりで選別のお手伝いごっこをしたり… 一年分の稲の収穫が終われば、一日中稲の乾燥機がまわる音がして… すると稲の中にいた小さなコクゾウムシがびっくりしてはい出てきます。

そんな感じで、たくさんの動植物にかこまれて育ったこともあり、自然と生き物の生態に興味を持つようになりました。小学校2年生の頃には、図鑑を見ながら生き物の絵を描いたり、名前を覚えたりして。この頃、昆虫採集が日課で虫を持ち帰っては自宅で観察… 今考えると少し母を困らせていたかも知れません。

− コクゾウムシ(穀象虫)改めて調べてしまいました(笑)
hitomiさんの生まれ育った環境は知的好奇心を膨らませてくれた原点ですね。自然豊かな場所で、目を輝かせて虫を捕まえている幼少期の体験が現在の活動にも繋がっているのではないでしょうか。


− また、どのようなところが魅力的に感じられますか?

描く対象としてどの生き物も大変魅力的なのですが、野鳥や昆虫は、都市部でも観察のできるとても身近な野生生物で、いつでも近くにいるのに以外と知らない事が多く、調べてみると大変面白いです。何より、太古より厳しい環境を生き抜いてきたその結果としての身体能力とディテールにすっかり魅了されてしまいました。

生態画を描くためには、まず描くために必要な資料を用意する必要があります。依頼されたものや取材、採集が困難なものは標本を購入することもありますが、できる限り取材、採集、飼育、観察を経て標本を制作し、信頼のできる書物を読み、標本を計測しながら図案を起こします(野鳥は、法律で飼育が禁止されているので注意)。大変な時間と手間のかかる作業ですが、そのプロセスの中で生物の進化の理由やメカニズムに気がつくことは、生態画を描く上で大きな魅力の一つでもあります。

− 作品づくりは採集、飼育からはじまることもあるのですね!とても驚きました。普段目にする生き物でも、意外と見ていなかったり気付かなかったりすることがほとんどですよね。生態画を描くことは、膨大な時間を積み上げて生き物と向き合うことで発見できる生物の魅力を感じて、作品として表現できるところとも言えそうですね。



Q. 今後、作家活動で挑戦したいことはありますか?


学術書のイラストレーションとして重要な役割を果たしてきた博物画ですが、写真技術の向上と電子化によりその需要は縮小傾向にあります。これからも、生態画を通して生物学の魅力や丹精を込めて丁寧に描かれた博物画のファインアートとしての可能性を広く伝えていきたいと思います。

また、今回の塗り絵制作を機に、ワイルドライフアートのファンだけでなく自由な自然散策の入口として子どもから大人まで気軽に楽しめるような作風にも取り組んでいきたいです。


この画像には alt 属性が指定されておらず、ファイル名は hitominakajima_5-1024x1024.jpg です

Q. 「アート塗り絵コレクション」出版プロジェクトは、イニシャルギャラリーの作家支援プロジェクトの一つになりますが、このような取り組みについてどう思われますか?

今回、初めてアナログとデジタルを組み合わせた手法に挑戦してみました。制作にあたりさまざまな思索を深め、情報を視覚化していく作業を進める中で自分の描いていきたいテーマや新たな表現方法について再考する良い機会となりました。

作家は常に表現の場を求めていますし、新しい取り組みにチャレンジしたいと思っています。昨年より、新型ウイルスの流行にともない緊急事態宣言が発出され、大規模なイベントは中止、公共施設は会場として使用できなくなっていきました。作品発表の機会が減り苦慮する中、この度の企画は、会場展示のみに頼らない作家活動の可能性を探るきっかけになったと感じています。

− 嬉しいお言葉ありがとうございます。今後も様々な企画や場所作りでこれからも作家さんに機会を提供できるよう努めてまいります。


この画像には alt 属性が指定されておらず、ファイル名は hitominakajima_1-1024x1024.jpg です

埼玉県生まれ
本ワイルドライフアート協会/Japan Wildlife Art Society 会員
一般社団法人 日本理科美術協会 会員

❖ グループ展/Group Exhibitions
2019 【理科美図鑑 ~科学をアートする~】(長野市立博物館/長野県長野市)
     【理科美図鑑+α ~こだわりの世界~】(戸隠地質化石博物館/長野県長野市)
2019〜【理科美術展(一社)日本理科美術協会 主催】(山脇ギャラリー/東京都千代田
    区)
2018 【どうぶつ図書館展】(ギャラリーコピス/東京都江東区)
2018~【りかび展@TAMA ZOO】(多摩動物公園ウォッチングセンター/東京都日野市)
2016 【春の銀座創作まつり!】(GALLERY STAGE-1/東京都中央区)
    【夏はムシムシ!虫アート展!~Insect art exhibition~ としまえんのもり昆虫 
    館主催】(としまえんのもり昆虫館/東京都練馬区)
    【特別展示 谷津干潟のワイルドライフアート展 谷津干潟自然観察センター主催】
    (谷津干潟自然観察センター/千葉県習志野市)
2013~【女視展 ~それぞれがみつめる生命(いのち)の息吹~】(交通会館/東京都千代 
    田区)
2009~【日本ワイルドライフアート協会展】(山脇ギャラリー/東京都千代田区)
    【ワイルドライフアート展 日本ワイルドライフアート協会主催】
    (新宿御苑インフォメーションセンター アートギャラリー/東京都新宿区)
    【ワイルドライフアート展 ジャパンバードフェスティバル実行委員会主催】
    (我孫子市生涯学習センター アビスタ/千葉県我孫子市)

❖ 他/Others
2018  としまえんのもり昆虫館 特別展「螢火」 広告デザイン(2018年・2019年)
    としまえんのもり昆虫館「幼虫飼育講座(ギラファノコギリクワガタ・ニジイロ
    クワガタ)」チラシデザ
2014 「知床世界自然遺産登録記念 9周年 道の駅(知床・らうす)特別記念切符」デザイン
2008 「消防科学と情報」一般財団法人 消防科学総合センター発行へ絵画寄稿(2008年
    7月〜2010年10月)
2000 「Daisuki」イラストカット(2000年9月〜2001年4月)

【HP】 【Instagram】 【Facebook】

今後の展示情報

◼️日本ワイルドライフアート協会展
[開催]2021年6月8日(火)〜13日(日)  10:00〜18:00 (初日13:00〜/最終日15:00まで)​
[会場]東京芸術劇場 5F  Gallery2
 東京都豊島区西池袋1-8-1 
 https://www.geigeki.jp
 *入場無料 [日本ワイルドライフアート協会Facebook

◼️ 女視展9th
〜それぞれがみつめる生命(いのち)の息吹〜
[開催]2022年3月6日(日)〜12日(土)  11:00〜19:00 (初日12:00〜/最終日16:00まで)​
[会場]東京交通会館 1F  ギャラリーパールルーム
 東京都千代田区有楽町2-10-1
 https://www.kotsukaikan.co.jp 
 *入場無料 [女視展Facebook

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* 新型コロナウイルスの感染状況により、開催日時の変更や中止になる可能性がございます。開催日が近くなりましたら、Facebookよりご確認ください。
* 来場時はマスクの着用をお願いいたします。

書籍情報

飾れるアート塗り絵『 アート塗り絵コレクション 』〜人物モチーフ編〜
定価1,650円(本体1,500円+税)A4判/並製/62頁
ISBN 978-4-9911614-0-7
・書店販売( 販売店舗一覧 )
・オンライン販売
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 HMV&BOOKS online
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