【美術史】メソポタミア美術、原始美術、エジプト美術、ギリシャ美術、ローマ美術について

2022月03月13日 アートの知識

メソポタミア美術

メソポタミア美術は、現在のイラク、シリア、トルコ、イランなどの地域に栄えた古代文明の美術です。メソポタミアは「川の間」という意味で、チグリス川とユーフラテス川に挟まれた地域を指します。メソポタミア文明は、紀元前4000年頃から始まり、紀元前3000年頃にはシュメール文明が成立しました。シュメール文明は、世界最古の文字である楔形文字を開発し、高度な文明を築きました。メソポタミア美術は、シュメール文明から始まり、バビロニア文明、アッシリア文明、ペルシャ帝国などの時代に発展しました。

メソポタミア美術の特徴は、次のとおりです。

  • 宗教的な意味合いが強い。
  • 石材や粘土などの自然素材を多用する。
  • 写実的な表現を好む。
  • 装飾的な要素が多い。

メソポタミア美術の代表的な作品には、次のようなものがあります。

  • ウル王墓の黄金の獅子像
  • ラムセス2世とミタンニ王の戦いの浮彫
  • バビロンの空中庭園
  • ペルセポリスのアパダナ宮殿

メソポタミア美術は、古代エジプト美術やギリシャ美術などの西洋美術に大きな影響を与えました。メソポタミア美術は、世界美術史において重要な位置を占める美術です。

メソポタミア美術の特に初期作品が残っていないのは宗教的な理由からだと言われています。
それはエジプトで見られたような、人間の魂を永遠に存続させるために肖像にする信仰がなかったからです。

メソポタミアの王は代々、戦争で勝利すると記念碑を作らせるのが習わしであり、職人がその話をレリーフとしました。特徴的な左右シンメトリーな架空の動物が何を意味しているのか、まだ正確には分かっていません。
しかし、ひとつひとつ場面が神話のように、なにか意味があったことは間違いないでしょう。
ありありと躍動している場面が多く、それは当時の人々にとって大きなニュースとして語り継がれるメディアとしての役割も担っていたはずです。


事実、戦いの場面ではアッシリア人の負傷者は一切、描かれていません。絵が単なる絵以上の威力を発揮することを認識していた何よりの証拠でしょう。プロパガンダ的な役割をメソポタミアの美術から強く感じることができます。  

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原始美術

原始美術とは、文字の使用が始まる以前の時代に生み出された美術です。原始美術の時代は、世界各地で異なりますが、一般的には、紀元前1万年頃から紀元前3000年頃までの時期を指します。原始美術の特徴は、次のとおりです。

  • 自然崇拝的な要素が強い。
  • 記号的な表現を好む。
  • 装飾的な要素が多い。

原始美術の代表的な作品には、次のようなものがあります。

  • ラスコー洞窟壁画
  • アルタミラ洞窟壁画
  • ヴィーナス・ドンバソワ
  • ヴィーナス・ウィルヘルミナ

原始美術は、西洋美術の源流の一つです。原始美術の特徴は、西洋美術の多くの作品に見られ、西洋美術の理解に欠かせない要素となっています。

美術の始まりがどこかはとても難しく、少なくとも高度な文明が発達するずっと前、紀元前1万年以上前の絵や彫刻は呪術の道具として使っていました。

つまり彼らにとって絵は「美しい」ものではなく「威力」を発揮するものだったのです。
獲物の絵を描き、それを槍や石斧で打ち続けることで、本物の動物を屈服させることが出来ると考えたはずです。
魔術的な目的で岩に描いており、そうすることで獲物を手にいれる力が得られると信じていました。
そして原始美術は決して技術的なレベルが低いわけではなく、現代と同じような「概念」さえあれば、巨匠となった人物も存在するはずです。
人間の根源的な部分を司る精神性とは何かという問いを、常に突きつけられるような力強さに魂が揺さぶられるのではないでしょうか。  

エジプト美術

エジプト美術は、紀元前3000年頃から紀元前30年頃まで続いた古代エジプトの美術です。エジプト美術の特徴は、次のとおりです。

  • 宗教的な意味合いが強い。
  • 永遠性を表すため、写実的な表現を好む。
  • 装飾的な要素が多い。

エジプト美術の代表的な作品には、次のようなものがあります。

  • ギザのピラミッド
  • スフィンクス
  • ツタンカーメン王の黄金のマスク
  • ラムセス2世の葬祭殿

エジプト美術は、古代ギリシャやローマ美術、そして西洋美術に大きな影響を与えました。エジプト美術は、世界美術史において重要な位置を占める美術です。

幾何学性の連続と正確な自然描写がエジプト美術の根幹にあります。
特に重要視されたのが完全さであることはレリーフを見ると明らかです。自然や様々な事象を不変の形で残すことこそ画家の役割だったのです。
対象となる絵が最も見えやすい角度で明確に描いています。
例えば紀元前1400年ごろに描いたとされる「ネバムンの庭」という壁画を見ると、真ん中に描かれた池は真上からの視点、池の中にいる生物は真横の視点、庭周りの木々は池を中心にして横からの視点で描かれています。
エジプト美術にこうした様式があることで、作品に調和と安定したリズムをもたらしているのです。
また約3000年近く様式はほとんど変化せず、新しい表現の概念が持ち込まれることはありませんでした。それは当時のエジプト王国が未来永劫続くものと思われていたからなのかもしれません。

ギリシャ美術

  ギリシャ美術を語る上で欠かせない場所が都市国家「アテネ」です。
そこにいた芸術家はエジプトの彫刻を真似しながら自ら新たな創作をしようと試みており、これが美術史上、最も革新的な出来事のひとつとなったのです。
新たなビジョンを手にした彫刻家たちは、次々と人体表現の実験的思考を模索していきます。
それに続いたのが画家です。
当時のギリシャは彫刻家よりも画家の方がよっぽど有名であったものの、残念ながら作品はほとんど残っていません。
しかし当時の壺に描かれた絵画から様々なことがわかるのです。もうエジプトのように、見えているものを全て描かなければならないというルールに縛られておらず、「短縮法」という技法によって新しい美術の世界が開けていくと同時に、それまでの美術の歴史に終止符が打たれたのもギリシャ美術によるものです。
この時代の傑作である「ラオコーン像」は、発見された当時のルネサンスの芸術家に多大な影響をもたらしています。

ローマ美術

古代ローマ美術は、紀元前8世紀頃から紀元3世紀頃まで続いた古代ローマの美術です。ローマ美術は、ギリシャ美術の影響を強く受けながら、独自の特徴を育みました。ローマ美術の特徴は、次のとおりです。

  • ギリシャ美術の影響を強く受けながら、実用的な分野にその特徴を発揮した。
  • 肖像彫刻、公共建築、絵画、モザイク画などが盛んに制作された。
  • 写実的な表現を好み、装飾的な要素も多い。

ローマ美術の代表的な作品には、次のようなものがあります。

  • コロッセオ
  • パンテオン
  • トラヤヌスの円柱
  • アポロとダフネ
  • ベレニケの肖像画

ローマ美術は、西洋美術の源流の一つです。ローマ美術の特徴は、西洋美術の多くの作品に見られ、西洋美術の理解に欠かせない要素となっています。

ローマ時代に入ると彫刻家に求められる課題もまた変わっていきます。
それはローマ人が戦いに勝利し、帝国を築き上げてきた歴史を語り継ぐことで国の偉大さを国内外に示そうとしたからです。
こうして細部まで正確に物語を伝える必要に迫られ、それに伴い美術の姿も変化していきます。
ギリシャ美術に見られたような装飾性はなくなり、よりシンプルな図像は伝播しやすいメディアとしての役割も担ったのです。
そしてこの時代に入るとキリスト教美術が台頭してきます。
例えば3世紀に見られる「燃える炉の中の3人のユダヤ人」では絵は美しいだけでなく、神の力や信仰を思い起こさせるものとして描かれています。
ローマ時代に入り、1度は正確な模倣をする方向へ戻りかけた美術はまたしても観念的な表現へと向かいました。

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