【美術史】アール・ヌーヴォー、アール・デコ、フォーヴィズム、キュビスム、未来派について

アートを学ぶ

2024月05月24日

革新的な芸術運動によって新しい表現の形が生まれ、昨今にも根付いています。今回は皆さんもどこかで聞いたこと、見たことがあるアール・ヌーヴォー、アール・デコ、フォーヴィズム、キュビスム、そして未来派についてご紹介します。

アール・ヌーヴォー

【美術史】アール・ヌーヴォー、アール・デコ、フォーヴィズム、キュビスム、未来派について

アール・ヌーヴォーは「新しい芸術」という意味の造語で、Art(芸術)+Nouveau(新しい)を組み合わせた言葉です。

この美術運動は19世紀の終わりから20世紀の始まりにかけてヨーロッパ全土で広がりました。産業革命がもたらした生活の変化により人々の暮らしは変化しましたが、市場には低品質な製品も出回るようになります。社会的背景の反動で芸術性の高い作品を求められるようになり、アール・ヌーヴォーは誕生しました。

自然界の花や植物からインスピレーションを得た流麗な曲線を用いたデザインが、この様式の特徴です。ギュスターヴ・クリムト、アルフォンス・ミュシャ、オーギュスト・ロダンといった画家が知られています。

装飾的な要素は、家具、建築、工芸品、絵画、彫刻といった多岐にわたる分野で重視されました。特にアルフォンス・ミュシャの作品は、その時代の他のアーティストと比較しても一際豪華で美しく、彼の代表作「ジスモンダ」では、フランスの名高い女優サラ・ベルナールを印象的に描写しています。また、工芸品や建築においても、新しい素材を取り入れた装飾的な美が追求されました。

アール・デコ

【美術史】アール・ヌーヴォー、アール・デコ、フォーヴィズム、キュビスム、未来派について
クライスラー・ビル

アール・デコは「装飾芸術」というフランス語の意味を持つArt(芸術)とDéco (装飾)を組み合わせた言葉から名付けられました。この美術様式は、1920年代から1930年代にヨーロッパで盛んになりました。第一次世界大戦後の社会変動が、伝統的な価値観への再考と、新しい時代を象徴するモダンなデザインへの志向を促しました。

アール・デコ様式は、その直線的で幾何学的なパターンによって識別されます。この洗練されたデザインは、家具、建築、工芸、ファッション、グラフィックデザインなど、多くの分野で受け入れられました。この時代を代表する建築家にはル・コルビュジエやフランク・ロイド・ライト、ミース・ファン・デル・ローエがおり、ファッション界ではココ・シャネル、クリスチャン・ディオール、エルザ・スキャパレッリが名を馳せました。

フォーヴィズム

フォーヴィズム、またの名を「野獣派」とも呼ばれるこの運動は、20世紀初めのフランスで起こりました。画家たちは感覚を尊重し、鮮やかな原色と大胆な筆使いを駆使して生命力に満ち溢れた作品を生み出しました。彼らは空間の深みよりも、色と形の存在感を重視しました。画面にはリズムが息づき、絵画の自由度を探求する新たな試みが展開されました。見えない感情を色彩で表現しようとする試み、芸術の歴史において革命的な一歩となりました。

フォーヴィズムを代表する画家には、アンリ・マティス、アンリ・ドローネ、モーリス・ド・ヴラマンク、アルベール・マルケ、ジョルジュ・ルオー、ケイス・ヴァン・ドンゲンが名を連ねています。フこの運動は、西洋美術に新たな動きをもたらし、後の抽象絵画や表現主義の発展に大きく寄与しました。

キュビスム

ゲルニカ

キュビスム(Cubism)は、20世紀初頭にフランスで起こった絵画の運動です。キュビスムとはフランス語で「立方主義」という意味で、この運動の画家たちは、物体を平面や直線に分割して表現することで、その本質を探求しました。この運動の革新性は、従来の単一視点に代わり多角的な視点を組み合わせて一つの画面に描き出したことにあります。

キュビスムの後期には、マルセル・デュシャンが「階段を降りる裸体No.2」を発表し、時間の概念を平面上で表現する試みを行いました。これは、絵画の二次元性に三次元の空間と四次元の時間を融合させるという、従来のキュビスムからの大きな進化でした。

キュビスムを代表する画家としては、パブロ・ピカソやジョルジュ・ブラック、アレクサンドル・カルリン、フェルナン・レジェ、ロベール・ドローネ、フアン・グリスが知られています。彼らの作品は絵画の新たな地平を切り開きました。

未来派

未来派は、20世紀初頭にイタリアで誕生した前衛的な芸術運動で、「未来」を意味するイタリア語から名付けられました。この運動は、近代化の波に乗り、動きやエネルギーを視覚的に捉えることを目指しました。画家たちは直線や曲線を駆使し、伝統に囚われない新たな視覚言語を追求しました。

未来派の火付け役となったのは、詩人フィリッポ・トンマーゾ・マリネッティの「未来派宣言」でした。イタリアの新聞「フィガロ」に掲載され、イタリアの芸術家たちに新たな刺激を与えました。ウンベルト・ボッチョーニの作品「空間における連続性の唯一の形態」は、動きを連続的に表現し、「速度」をテーマにした美を創出しました。

未来派の主要な画家にはウンベルト・ボッチョーニ、ジャコモ・バルラ、ルイジ・ルッソロ、カルロ・カラーラ、ジャン・パスカル・ドーミニク・アッピア、アントニオ・セガンティーニがおり、彼らは芸術の新しい地平を切り開いたとされています。

現代の生活にもある美術様式

アール・ヌーヴォーの曲線美、アール・デコの幾何学的なデザイン、フォーヴィズムの色彩の大胆さ、キュビスムの形の分析、そして未来派の技術革新など、昨今の美術にも大きな影響を与えています。絵画や建築物を見たときに、歴史や時代背景を知ると日常がもっと面白くなるかもしれません。

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