【美術史】ジャポニズム、印象派、ポスト印象派、象徴主義、ナビ派について

アートを学ぶ

2025月01月21日

印象派

クロード・モネ 《日の出》
クロード・モネ 《日の出》

印象派は、19世紀後半にフランスを中心に起こった美術運動です。従来のアカデミックな絵画とは異なり、光と色の変化を捉え、瞬間的な印象をキャンバスに表現するという新しいスタイルが特徴です。まるで動きや時間が感じられるような一瞬の印象を捉えることを目指し、自然光が対象物に当たることで生まれる色彩の変化を短い筆触で重ねていくことで、光のきらめきや空気感を表現しました。

印象派が生まれた背景

チューブ絵の具が登場する以前は、絵の具を豚の膀胱や動物の角などに入れて持ち運んでいました。これらの容器は破損しやすく持ち運びに不便でした。しかしチューブ絵の具の普及により、絵の具が密封されているため、持ち運びが容易になり、屋外での写生が現実的になりました。チューブから直接絵の具を出せるため、調合の手間が省け、素早く描くことが可能になりました。
これにより自然光の下での色彩の変化や大気中の光の揺らぎなどを捉え、より自然な光の変化を捉えようとしました。

印象派を代表する画家

クロード・モネ: 晩年のモネが生涯を捧げたシリーズ。池の睡蓮を様々な角度から描いた《睡蓮》

ピエール・オーギュスト・ルノワール:パリの社交場を華やかに描いた作品《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会》

ジャポニズム

フィンセント・ファン・ゴッホ《花魁(溪斎英泉による)》
フィンセント・ファン・ゴッホ《花魁(溪斎英泉による)》

ジャポニズムとは、19世紀後半のヨーロッパ、特にフランスを中心に流行した「日本趣味」のことです。日本の美術や工芸品がヨーロッパに紹介され、その独特な美意識や技法、浮世絵などの日本美術が印象派をはじめとする多くの芸術家に影響を与えました。

ジャポニズムが生まれた背景

明治維新以降、日本は鎖国を解き西洋文化を取り入れつつ独自の文化を発展させていきました。1867年のパリ万博で日本の美術工芸品が紹介され、ヨーロッパの人々に大きな衝撃を与えました。特に浮世絵は、その鮮やかな色彩、大胆な構図、そして日常を描いた親しみやすい題材が西洋の画家たちに新鮮な驚きを与えました。

ジャポニズムを代表する画家

クロード・モネ: 印象派の巨匠。モネが妻のカミーレに日本の着物を着せ、扇を持たせて描いた作品《ラ・ジャポネーズ》

フィンセント・ファン・ゴッホ: 背景にゴッホが収集していた日本の浮世絵が多数描かれている作品《タンギー爺さん》

エドガー・ドガ: 人物のポーズや構図に、葛飾北斎の「北斎漫画」に登場する人物のポーズとの共通点が見られる作品《踊り子たち、ピンクと緑》

ポスト印象派

ジョルジュ・スーラ 《グランド・ジャット島の日曜日の午後》
ジョルジュ・スーラ 《グランド・ジャット島の日曜日の午後》

ポスト印象派は、19世紀後半のフランスを中心に活躍した画家たちの総称です。印象派をベースにしながらも、より個人的な表現や感情、抽象的な概念を追求した、印象派から脱却する脱印象派ともいえる美術運動です。

ポスト印象派が生まれた背景

印象派の画家たちは自然光を捉えることに重点を置きましたが、ポスト印象派の画家たちは、より個人的な表現や感情、抽象的な概念を追求しました、形を単純化したり、色彩を大胆に用いたりする新しい表現方法を求めるようになったと考えられます。

ポスト印象派を代表する画家

フィンセント・ファン・ゴッホ:夜の街並みが幻想的に描かれており、ゴッホの心の内面が反映されていると言われている作品《夜のカフェテラス》

ジョルジュ・スーラ:点描画の技法を用いて、大勢の人々が集まる様子を緻密に描いた作品《グランド・ジャット島の日曜日の午後》

ポール・セザンヌ:静物画でありながら、空間の奥行きが感じられる革新的な作品《リンゴのある静物》

象徴主義

グスタフ・クリムト 《接吻》
グスタフ・クリムト 《接吻》

象徴主義は、19世紀後半にヨーロッパを中心におこった反写実主義的な芸術運動の一つです。物や事象をそのまま描くのではなく、それらが象徴する抽象的な概念や感情を表現することを重視しました。文学、音楽、絵画など様々な分野で現れ、特に詩や絵画において大きな影響を与えたとされています。

象徴主義が生まれた背景

産業革命によって人々の生活は大きく変化し、従来の価値観や宗教観に疑問を抱き始めたという時代背景の中で象徴主義が生まれました。現実世界を超えた神秘的なものや内面の深層心理、より文学的で詩的な表現を重視する傾向があります。

■象徴主義を代表する画家

オディロン・ルドン:ギリシア神話に登場する一つ目の巨人キュクロプスを題材にした作品《キュクロプス》

エドヴァルド・ムンク:不安や絶望といった人間の心の闇を表現した作品《叫び》

グスタフ・クリムト:男女が抱き合う瞬間を描き、生命の誕生や愛を象徴する作品《接吻》

ナビ派

モーリス・ドニ 《オデュッセウスの目覚め》」 (1914)
モーリス・ドニ 《オデュッセウスの目覚め》」 (1914)

ナビ派は、19世紀末のパリで活動した、前衛的な芸術家の集団です。その名の由来は、ヘブライ語で「預言者」を意味する「ナビ」で、詩人のアンリ・カリアスによって名付けられました。彼らは、後期印象派の画家ポール・ゴーギャンの影響を強く受け、独自の芸術表現を模索しました。

ナビ派が生まれた背景

ナビ派は1888年、ブルターニュのポン=タヴェンでポール・セリュジエがポール・ゴーギャンの指導を受けたことがきっかけで結成されました。ゴーギャンの色彩感覚や象徴的な表現に感銘を受けたセリュジエは、パリに戻り、アカデミー・ジュリアンで学んでいた仲間たちと新しい芸術集団を結成しました。

ナビ派を代表する画家

ポール・セリュジエ:象徴的な色彩とシンプルな構図が特徴の作品《タリスマン》

エドゥアール・ヴュイヤール:内でベッドに横たわる人物を柔らかな色彩と繊細なタッチで描いた作品《ベッドにて》


アート作品を購入する前に知っておきたい!時代とともに変化する芸術表現で使われる美術用語を解説。この記事では、現代美術における主要な表現手法について、その特徴や代表作を紹介します。アート鑑賞をもっと深く楽しむ、購入する際の参考にしてみてください。

現代アートが買えるオンラインショップはこちら
あなたにぴったりなアートは?
アートタイプ診断
3つの質問に答えてね!
カテゴリ:
アートを学ぶ
この記事のキーワード