【美術技法】ドリッピング、スパッタリング、マーブリング、スタンピング、バチック

2022月04月08日 アートの知識

ドリッピング

ドリッピングは絵の具を「滴らせる」ことを意味する技法です。

戦後、現代アートの中心地となったアメリカを代表する抽象画家であるジャクソン・ポロックによって確立されました。それまでのアートはキャンパスに筆で描くものであったのに対して、ボロックは絵の具を垂らす、それも全身を使って描かれたアクションによって作品が生まれることから、アクションペインティングと呼ばれる技法が現代アートで確固たるものになります。

それと同時にドリッピングという手法も一般的な社会へと浸透していきます。実はこのドリッピングは絵画以外にも使われており、例えば陶磁器などの分野ではドリッピングのような手法は古くから使われていました。また幼児教育などの分野でも広く取り入れられています。

一般的なドリッピング手法

  1. 溶液の調製:適切な溶液や塗料を調製します。この溶液には、目的の薄膜の材料が含まれていることがあります。
  2. 基板の準備:基板をクリーンルーム環境できれいに洗浄し、表面を適切に処理します。これは、薄膜がしっかりと付着するための重要なステップです。
  3. ドリッピング:溶液を小さなドロップとして基板上に垂らします。基板は平らな面であり、液滴は均一な形状に広がります。
  4. 乾燥と焼成:ドリッピングされた溶液が乾燥し、必要に応じて熱処理(焼成)が行われます。これにより、薄膜が固定され、基板に密着します。

スパッタリング

美術教育や子ども向けの造形教室などでも広く使われるスパッタリングという技法は、とてもシンプルです。用意するものは画用紙と絵具の他に、金網とブラシがあればすぐに出来ます。

絵の具と水を1対1の割合で溶き、金網にランダムに塗ります。金網と画用紙は少し距離を置き、ブラシを使って金網をこすります。それによりドリッピングとは異なる風合いになるもの面白い特徴です。

誰でも簡単に応用ができるので、子どもから大人まで幅広い世代に色彩の面白さに触れてもらう体験が可能となります。

一般的なスパッタリング手法

  1. ターゲットの準備:スパッタリング装置内のターゲット(固体材料)を選択し、その表面をきれいに洗浄します。
  2. 基板の準備:ドリッピングと同様に、基板をクリーンルーム環境で処理します。
  3. スパッタリングプロセス:ターゲットにイオンビームを照射し、その結果としてターゲット表面から材料の粒子が放出されます。これらの粒子は基板に向かって飛び、基板上に薄膜を形成します。
  4. 冷却:堆積した薄膜を冷却することにより、膜の微細構造が安定化します。冷却後、薄膜は基板にしっかりと付着しています。

ドリッピング スパッタリングの違い

ドリッピングとスパッタリングの主な違いは、材料の状態とプロセスの制御方法にあります。ドリッピングでは、溶液や塗料が液体の状態で基板に垂らされます。このため、溶液中の物質の濃度やドロップの大きさなどを制御することが重要です。一方、スパッタリングでは、固体の材料が粒子として放出され、イオンビームの強度や角度などを調整して粒子の飛距離や角度を制御します。

また、ドリッピングは一般的に比較的単純で低コストなプロセスであり、広範囲に使用されています。一方、スパッタリングは高度な装置が必要であり、より高品質な薄膜を形成することができます。スパッタリングは、半導体、光学、磁気、防食、バイオ医療などの分野で広く使用されています。

総合すると、ドリッピングとスパッタリングは、基板に薄膜を形成するための二つの主要な物理的堆積技術です。それぞれの技術は、プロセスや装置の制御方法に違いがあり、材料やアプリケーションに応じて選択する必要があります。

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マーブリング

マーブリング(Marbling)は、絵画や工芸品の制作技法の一つであり、浮かび上がるような彩色模様を作り出す技法です。主に紙や布、陶器、木材などの表面に対して行われます。

マーブリングは、色とりどりの顔料を水や油などの媒体に浮かべ、その上に素材を浸すことで模様を作り出す独特な方法です。

マーブリングの起源は古代からさかのぼりますが、最もよく知られているのは16世紀のトルコ文化であり、オスマン帝国の芸術技術として広まりました。当初は本や紙の表紙に使用される装飾技法として始まりましたが、後に絵画や工芸品にも応用されるようになりました。

一般的なマーブリングの手法

  1. 水槽や容器に水を入れ、その上に特殊な顔料を散らします。顔料は水の表面に浮かぶようになります。
  2. 溶剤や特殊な道具を使って、顔料の表面に模様を作ります。この時、模様を作るために道具を水の表面に浸し、顔料を動かすことで模様が形成されます。この過程では、抽象的な模様や花や葉のような具体的な形を作り出すことができます。
  3. マーブリングインクや酢酸などの凝固剤を使用して、模様を固定します。これにより、マーブリングした模様が素材の表面に定着し、色あせたり剥がれたりすることがありません。
  4. 最後に、マーブリングした素材を水から取り出し、余分な水分を取り除いて乾かします。これにより、仕上がった作品が完成します。

マーブリングは、その美しい模様や奥行きのある色彩効果から、本や紙の装飾、絵画、ストール、テキスタイル、壁紙、陶器などの様々な用途に使用されています。技法自体は独特で複雑なため、経験と熟練を必要とすることがありますが、その結果として生み出され

る作品は、魅力的で独創的なものとなることが多いです。

スタンピング

スタンピング(Stamping)は、美術や工芸の分野で使用される技法の一つです。

この技法では、特殊なスタンプや型を使ってインクや顔料を素材の表面に転写し、模様やデザインを作り出します。スタンピングは、紙や布、陶器、木材など様々な素材に対して行われます。

一般的なスタンピングの手法

  1. スタンプの選択: スタンピングに使用するスタンプは、シリコン製やゴム製のものが一般的です。スタンプには、文字、イラスト、図案、模様など、さまざまなデザインがあります。また、複数のスタンプを組み合わせて複雑なパターンを作り出すことも可能です。
  2. インクや顔料の準備: スタンピングには、特殊なスタンピングインクや顔料が使用されます。これらのインクは、スタンプに均等に付着し、素材の表面に綺麗な転写をするために設計されています。
  3. スタンプのインクへの転写: スタンプをインクや顔料に浸し、余分なインクを軽く拭き取ります。スタンプは均一にインクを含ませるため、均一な転写ができるようにします。
  4. 素材への転写: インクや顔料を含んだスタンプを素材の表面に押し付けます。均一な圧力をかけてスタンプを押すことで、インクや顔料が素材に転写されます。
  5. 模様の再現: スタンプを素材から取り除いた後、転写された模様やデザインを確認します。必要に応じて、同じスタンプや別のスタンプを使用して、模様を追加したり修正したりすることもできます。

スタンピングは、その手軽さと多様なデザインの可能性から、手作りカード、スクラップブッキング、ハンドメイドクラフト、テキスタイルデザインなど、さまざまな現場でで利用されています。また、スタンピングにはカラフルな顔料やインクを使用することができるため、鮮やかな色彩を表現するのにも適しています。

スタンピングは比較的簡単に学ぶことができるため、比較的初心者でも楽しむことができる美術技法と言えます。

独自のスタンプを作成することも可能なのであなただけのオリジナル作品を作成していきましょう。

バチック

バチック(Batik)は、主に布地に対して行われる伝統的な染色技法であり、その起源は古代からさかのぼると言われています。

バチックは、特殊なワックスを使って布地の一部を覆い、染料を浸透させることで複雑な模様やデザインを作り出す技法です。

一般的なバチックの手法

  1. ワックスの用意: バチックには、特殊な染料に耐えるために溶けない性質を持つワックスが使用されます。このワックスは、蜜蝋やパラフィンワックスなどが一般的に使用されます。ワックスは溶かして液状にし、筆やツールを使って布地に直接塗布することができます。
  2. ワックスの塗布: 布地の上にワックスを塗布することで、染料が浸透しないようにします。ワックスを塗布する部分は、後の染色プロセスで染料が浸透しにくくなります。バチックの特徴的な要素やデザインを作りたい部分にワックスを塗ることが一般的です。
  3. 染料の準備と染色: 染料は布地に染み込むことで、ワックスの塗布されていない部分に色を付けます。染料は水性や油性であり、それぞれ異なる効果を生み出します。布地を染料の中に浸し、時間や温度などの条件を調整することで、染色の効果や色の濃淡をコントロールします。
  4. ワックスの除去: 染料が完全に乾燥した後、ワックスを布地から除去します。これにより、ワックスで覆われていた部分が染料で染まり、模様やデザインが浮かび上がります。ワックスを除去する方法としては、熱を加えてワックスを融かす、ワックスを吸い取る、またはワックスを洗い流すなどがあります。
  5. 仕上げの処理: バチックで染色された布地は、最終的に仕上げの処理を行います。これにより、染色が固定され、耐久性が向上します。仕上げの処理には、布地の洗浄や乾燥、アイロンを使用して平滑化するなどのステップがあります。

バチックは、その独特な模様や鮮やかな色彩で知られており、衣類、テキスタイル、アクセサリー、壁掛けなどの様々なアイテムに応用されています。

伝統的なバチックの技法に加えて、現代のアーティストやデザイナーは新しい染料やワックスの使用、異なるテキスタイルへの応用など、バチックをさらに進化させるために日々クリエイターたちは試行錯誤を行っています。

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